2022年の首都圏中学受験者数は5万人を超えて過去最高となり、受験競争の激化が続く。開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺を中心に都内に展開する進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。
中学受験を取り巻く環境は激変している
ひとりっ子の子育ての場合、兄や姉という比較対象がないため、親はつい「自分が子どもだった頃」と比べてものを考えてしまいます。しかし、そこにはおよそ30年の開きがあります。その間に、教育事情は大きく変化しています。
とくに、中学受験をめぐる環境は様変わりしました。親世代の頃は、中学受験にかける準備期間は約2年でした。5年生になってから塾に通い始めれば良かったわけです。しかし、今は3年から3年半が必要になっています。つまり、3年生のうちに塾に入ってなんとかギリギリというところです。
塾なしで中学受験は「無謀な挑戦」
こういう状況について、「過熱」を指摘する声もあります。本来、子どもの学びは学校で得るものであって、幼い頃からせっせと塾に通わせるのはおかしいというわけです。子どもに対する理想が高いひとりっ子の親は、「のびのびと育てたい」という気持ちから、こちらの方向に傾くケースも多々あります。
その意見は尊重しますが、中学受験を考えているなら、塾に通わせることはほぼ不可欠です。というのも、今の公立小学校のカリキュラムや授業の体制は、親の時代とは違い、中学受験にはおよそ対応できないものとなっているからです。
上の子を育てた経験がある親はそのことに気づいていますが、ひとりっ子の親はわかりません。だから、まず「自分たちの頃とは違うのだ」という認識を持って、さまざまな情報に接してください。
ちなみに、欧米諸国では、日本のような塾文化はありません。彼らの国では「飛び級・降級」が設定されていて、優秀な子はどんどん上の授業を受けられるからですしかし、日本の義務教育は、広く一般的な知識を与えること優先で、個々のレベルに合わせるのは不可能です。
そういう状況にあって、塾というものをいかに上手に使っていくかが、大事なポイントになってきます。大事なのは、自分の子どもに合った勉強方法や進路を考えることです。
教育機会は平等ではない
親の時代と比べ今は、働き方改革やパワハラ抑止策が大きく進んでいます。このことによって、子どもたちは親のときのような教育を受けられなくなっています。
勉強についていけない子がいたときに、先生が残って見てあげればサービス残業になってしまいます。授業中に騒いでいる子を怒鳴りつければ、パワハラだと保護者からクレームが入ります。
こういう状況にあって、小学校の平等教育は限界に来ているのです。現場の先生も頑張っていますが、世の中は変化し、子どもの進路も多様化しています。
そのことを認識し、親は躊躇なく塾探しに動いたり、インターナショナルスクールなど、わが子に最適な道を選びましょう。野球やサッカーなどのスポーツも、プロで活躍している選手の大半は、小学2年生くらいからクラブに入会して練習を積んでいます。勉強も同様で、スタートダッシュは非常に大事なのです。
(本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)