Aさん:家族が介護者側に求めるサービスのレベルが、あまりに高すぎるということもあります。以前、施設のベッドで尿を漏らした利用者の家族が、「家では漏らしたことが一度もなかったのに、この施設の対応はどうなっているんだ」とクレームを入れてきました。聞けば、「尿意をもよおしていることぐらい、表情の変化で読み取れ」と言う。私たち施設のスタッフは、常に特定の一人を見ているわけではないため、それは求めすぎ。でもそれが理解できない家族というのもいるんですよね。
Bさん:わかります。自分たちの手は汚したくないけど、介護者に対してめちゃくちゃな要求を振りかざしたり、何事にも意見してくる家族は、少なからずいますよね。
Cさん:老衰が進むことを受け入れられない家族というのもいますよね。利用者が認知症で服薬を忘れている現実を前に、「薬を飲みたくないんですね」と本人の意思の問題にすり替えたりする。老衰の現実を受け入れられず、「利用者がこうなったのは、介護者側の責任だ」と言わんばかりの態度を取る家族も。
Aさん:今年、60代の息子が90代の母親の担当医を殺害するという悲惨な事件が起きましたよね。家族の思いが強すぎるあまりに、医療者や介護者に敵意が向けられることは、少なからずあるように感じます。
Bさん:これは個人的な見解ですが、親一人、子一人の二人暮らしが長い親子は、共依存度が高いように思います。二人だけの世界ができあがっていて、私たちのような外部の人間をなかなか信用しない。以前、80代の利用者のお宅を訪問していたとき、60代の独身の娘さんから「ちゃんとやったんですか?」「もっと丁寧にやってください!」と執拗に高いレベルの要求を受けたことがありました。ある程度、こちらを信用して任せてもらえないと、精神的にも疲れてしまいます。
Cさん:「そこまで言うなら、自分でやってください」と言いたくなりますよね。逆に、前向きにやってあげたいと思えるような家族もたくさんいます。共通するのは、私たちサポート側を信頼してくれていること、相手の目線に立って物事を考えてくれること。また「今、何に困っている」と困りごとや質問を明確にしている人も、ケアがスムーズに進みやすい。