高齢者の急増に費用が追い付かないため介護保険制度の介護サービスが縮減されつつある。現在70歳前後の団塊の世代が80歳を超えると、介護サービスへの需要はさらに高まる。他の先進諸国でも同様に、ベビーブーマー世代の高齢化に伴う財源難に悩まされ、効率的な運用に乗り出した。
介護保険を日本より早く制度化したオランダとドイツでは独自の総費用抑制策に取り組んでいる。
オランダは自治体への権限移譲で
交付金25%減、住民の力を借りる路線へ
1968年のナーシングホーム(日本の特別養護老人ホームに相当)から介護保険(AWBZ)の導入を始めたオランダでは、2007年に第一次の改革を始めた。介護保険サービスの中の掃除や買い物などの家事援助を地方自治体に権限を移し、その分国の負担を軽くした。受け皿となった自治体の制度(WMO)は、従来の社会福祉法と障害者法を統合したもので、住民主体の住民自治の力を効率的に発揮してもらおうという狙いだ。
これに先立ち、就任したばかりのウィレム・アレクサンダー国王が2013年9月に「オランダは、これまでの福祉国家から参加社会に転換しなければ」との声明を発表した。手厚い社会保障政策を続けてきたが、GDPに対する予算比率が年々高まり、もはや限界と判断。政府に頼るだけではなく、国民一人ひとりが地域社会への参加意識を持ち、助け合い活動に乗り出すように呼び掛けた。
元々ボランティア活動が浸透している国だけに、国王の呼びかけは好意的受けとめられた。AWBZの改革もその路線上で行われた。
次いで、2015年には第二次改革に挑む。AWBZの役割を高齢者施設だけに限定し、訪問看護やリハビリなど医療系サービスを医療保険(ZVW)に移すとともに、通所介護などの在宅サービスをWMOに全面移行させ、AWBZの名称もWLZと変えた。(図1)
こうした地方自治体への権限移譲にともない、国から自治体への交付金も2015年から25%削減した。
介護教育部長が語る改革方針
医療者と近隣住民を繋ぐ「地域ケア」の重要性
首都のアムステルダムで、この2015年改革を担うデュオ・ステュールマン介護教育部長から具体的な方針を聞いた。
「大規模で単機能なサービス提供法を改め、小規模で多機能な方式に転換させようとしています。地域から疎遠な関係から地域に密着したやり方に変える。住民へのサービスがより行き届くようになります。そのために小さな組織を支援していきたい」