11月6日の早慶戦で試合前に整列する選手たち11月6日に行われた今秋季リーグ最終戦は伝統の早慶戦

2022東京六大学秋季リーグ戦。11月5、6日に行われた早慶戦は、5X-4、9-6と早稲田大学が連勝した。この結果を受けて明治大学の優勝が決まった。明治は春秋連覇である。早慶戦、慶応は2勝して勝ち点を挙げれば優勝だった。一方の早稲田は、勝てば2位、負ければ3位。それでも目前でのライバルの胴上げを阻止しようとする早稲田の気迫は素晴らしく、そして慶応も見事な粘りを見せた。2試合ともに緊張度の高い試合だった。(作家 須藤靖貴)

勝っても優勝がない早稲田
伝統の早慶戦をどう戦ったか

 伝統の早慶戦。早稲田が勝ち点を奪っても優勝はない。

 それでも、両日ともに2万2000人が詰めかけた。早慶それぞれのファン、両軍のOBや関係者たちが伝統の一戦を楽しみに神宮に足を運ぶ。80代の御仁が学生服に角帽といった正装で背筋を伸ばす。若い学生も大勢いる。両校付属の小学生の制服姿が見られるのも、早慶戦ならでは。一塁側内野席の最前列に並んでいた50代の男性グループ。ライバルの優勝を阻む早稲田の気合に期待して名古屋からやってきた、と楽しげだった。

 私は2階席の早稲田側シートに腰を下ろしていたのだが、そこかしこに野球部OBが陣取っていて、その会話は興味深いものだった。

 齢(よわい)80を超えたあるOBが、野村徹・第16代監督との思い出を語っていた。野村は『伝説の早慶6連戦』時の正捕手。卒業後は実業団の強豪・大昭和製紙でプレーし、監督としても都市対抗に優勝。1999年に母校に戻り、2004年まで監督を務めた。2002年春から、部史上初の4連覇の偉業を成している。「野村さんが監督を務めた時期の野球部の雰囲気が理想」と小宮山監督に言わしめている。

 2階席にいたOBの表情ははつらつとしていて声も高らか。話の中身がそよ風に乗って聞こえてくる。「もう一度、母校の監督をやるつもりはないか」と問われた野村はこう答えたという。

「次にやるとしたら……。今までのように、こちらから一方的に発信するのではなく、選手の言葉を先に聞いてからの指導になるだろう」

 自主、自律、自立の精神。小宮山監督が日頃から提唱する指導理念と重なるものだ。

 飛田穂洲(初代監督)、石井連藏、野村徹、そして小宮山悟へと続く早稲田大学野球部の伝統。試合直前のOBの会話が、そのことを改めて想起させてくれたのだった。