11月10日、米国の10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比7.7%上昇したことが明らかに。市場参加者は短絡的に「FRBの利上げ打ち止めが近い」と曲解し、株価が大幅反発した。しかし、米国の金融引き締めの遅れは深刻だ。CPI発表後、複数のFRB関係者は、「インフレ鎮静化のために金融引き締めを続ける見解」を改めて示した。金融引き締めが長引くリスクとして、新興国の経済と金融市場への打撃が懸念される。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
米国では企業業績の悪化への懸念が本格化
米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利の引き上げ期間が、主要投資家の予想以上に長引きそうだ。特に、11月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエル議長が「インフレ鎮静化は道半ば」と述べたことは大きい。
11月10日、米国の10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比7.7%上昇したことが明らかになった。市場予想を0.2ポイント下回った。また、9月(同8.2%)からの上昇率は鈍化した。それでもなお、インフレ率は依然として高い。
また、改善ペースは鈍化しつつあるが、米国の労働市場は過熱気味に推移している。FRBにとって、2%の物価目標達成は長い道のりといえる。
FRBによる金融引き締めは長引くものと考えられる。それによって金利には上昇圧力がかかり、米国は景気後退に陥るだろう。その結果、世界経済を支えてきた米国では企業業績の悪化懸念が本格的に高まり、株価の調整圧力は強まりやすい。新興国からの資金流出も加速し、世界の実体経済と金融市場の先行き懸念がさらに高まる展開が予想される。