「逆CPIショック」で株高ムードも上値は限定的?企業のインフレ体質定着リスクPhoto:PIXTA

米国の10月の消費者物価上昇率が市場予想を下回ったことで市場はリスクオンの様相を見せているが、局面転換とみるのはまだ早い。それどころが、市場は今後の企業業績下方修正を織り込んでいない。加えて、インフレ体質定着は適正なPER水準を低下させる。株価の上昇余地は限定的だ。(クレディ・スイス証券株式会社 ウェルス・マネジメント チーフ・インベストメント・オフィサー・ジャパン 松本聡一郎)

リスクオフの一掃、市場の
調整局面転換とみるのは早計

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は8月のジャクソンホール会合で、高いインフレ率を抑え込むために何でもやる姿勢を打ち出し、マーケットを身構えさせた。

 その後発表された8月と9月の消費者物価指数は予想を上回った。このためマーケットは、FRBがインフレ抑制のためなりふり構わず利上げを行い、経済が深刻なリセッションに陥る恐怖と向き合わされた。

 11月10日に発表された10月の米国消費者物価指数は、3カ月ぶりにエコノミスト予想を下回る伸びとなり、久々にマーケットの心理を好転させた。

 恐怖から解放された気分のマーケットは、大きくリスクオンの動きを強め、株式や長期債は反転上昇し、ほとんどの通貨に対し全面高となっていた米ドルは一転下落した。

 これで投資家のリスクオフムードは一掃され、マーケットの調整はプラス転換したのだろうか。クレディ・スイスは、まだ早いと考えている。

 次ページからはまだ早いと考える理由を説明していく。