写真:ホテルで働く女性,フロント写真はイメージです Photo:PIXTA

10月11日、全国を対象に国内旅行の支援事業「全国旅行支援」が始まった。前回の「GoToトラベル」から約2年ぶりの旅行支援で、行楽シーズンの観光地はにぎわいを見せている。さらに、1日5万人規模に制限されていた訪日観光客の入国制限数も撤廃され、円安も追い風となって再びインバウンド需要に期待が高まっている。感染第8波も懸念されるが、ウィズコロナの動きが進むなかで宿泊業にもようやく明るい兆しが見えてきた。だが、コロナ禍で宿泊業のビジネスモデルは大きく変わった。深刻な過剰債務とコストアップに直面し、期待される客足の回復に対応できるのか。宿泊業はまさに正念場を迎えている。(東京商工リサーチ情報部 二木章吉)

宿泊業倒産の急増が一転
政策支援で沈静化へ

 コロナ禍から間もなく3年が経過する。

 宿泊業の倒産は、インバウンド需要を謳歌(おうか)していたコロナ前の2019年まで、年間70件~80件台で推移した。破たんはインバウンド恩恵に浴せなかった地方の寂れた温泉旅館などがほとんど。都市部ではホテル需要が過熱し、ビジネスホテルも料金高騰が社会問題化するほど活況を呈していた。こうした需要の受け皿として「民泊」に熱い視線が注がれたのも記憶に新しい。

 ところが、コロナ禍の直撃で状況が一変する。コロナ禍に翻弄された2020年の宿泊業倒産は118件と、7年ぶりに100件を超えた。それまで小規模倒産が中心だったが、負債100億円以上の大型倒産も18件と前年から倍増した。事業環境は絶頂からどん底へ、まさに急降下した。

 典型的な装置産業である宿泊業は設備投資が先行し、その後何年にも渡って宿泊料(売り上げ)から投資を回収するスタイルが基本だ。このため事業規模にかかわらず、多額の有利子負債を抱え、財務基盤が脆弱な事業者が多い。そこでは施設の稼働率こそが最も重要な生命線になる。

 インバウンドや東京オリンピックを見越し、宿泊業の投資は大型ホテルの新設だけでなく、既存ホテルや地方の旅館でも大改修が相次いだ。そこにコロナ禍が直撃したからダメージは大きかった。客足が突如途絶えた事業者は一気に資金繰りに行き詰まり、自力で立ち直るのは容易でなかった。