資本関係とは反対に
日産が規模で勝る

 日産にとってルノーはかつての救世主ではあるが、提携20年余りが経過する中で、日産によるルノーへの「上納金」がルノーの業績に大きく寄与してきたのも確かだ。21年度は、親会社のルノーの連結売上高462億ユーロ(約6兆700億円)、世界販売269万台に対し、日産が8兆4246億円、387万台と売り上げ・台数ともにルノーを上回っている。

 日産としては現状に対する不満感は強いだろう。ルノーが持つ日産株が43%なのに対して、日産側は15%しか持たない。しかも、仏商法で日産が持つルノー株の議決権は実質的に無効なのだ。ルノーと日産のアライアンスの根幹を成す「RAMA(改訂アライアンス基本契約)」は、昨年と今年の日産株主総会で「不平等なアライアンス状況が改善されないのはRAMAの内容の是非が株主間でも議論に付されていないから」だとして、全面開示を求める議案が提示されている。

 つまり、日産側はかつての窮状を助けてくれたルノーに恩義はあるが、「ルノーのEV新会社に出資するなら現在の資本関係も対等にするチャンスであり、それが望ましい」との考えがあり、水面下で交渉が進められているのだ。

 23年度3月期の上期決算発表の時期から三菱自の加藤隆雄社長は「ルノーの計画概要は聞いており、三菱自にとってメリットがあるかと検討に入っている。連合への協力は不可欠だが、短期間で結論が出るものではない」と語った。また、日産・内田誠社長は「どのようなアライアンスの姿が各社により大きな利益をもたらすことができるのか、現在オープンで建設的な議論を重ねている。パートナーとの協業は自然な流れを受け止めているが、もう少し時間をいただきたい」と、ともに慎重な発言を示した。