いずれにせよ、ルノー側は欧州・EUの急速なEVシフトへの対応を求められていることと、19年度・20年度と最終赤字に転落し、22年度1~9月も売上高が前年同期比4%減にとどまった上、ロシア事業撤退の損失を計上するなど厳しい経営状況にある。今後の成長戦略である事業改革、特にEV新会社設立の資金確保は大きな課題だ。

 出資・参画を求めることはルノーにとって必須であり、同時にルノーの現状での焦りの裏返しでもあろう。日産、三菱自ともにEV技術のノウハウには大きな自信を持っているし、両社共同新開発の軽EV「サクラ」/「ekクロスEV」は、自動車殿堂とRJCのカーオブザイヤーの二冠に輝いた。ルノーは、何としても日産・三菱自に参画してほしいところだろう。

 ルノーがEV強化へグーグルやクアルコムとも連携して、日産と三菱自を巻き込むことができるかは、日産との資本関係見直しに結びつけられるかにかかっている。そのポイントは、やはり仏政府の意向ということになる。

 仏政府にとって、かつて「ルノー公団」であったルノーが現在も15%出資をする“国策自動車メーカー”であることに変わりはない。だが、ルノーのライバルであるプジョーグループは、伊フィアット・米クライスラーと統合して「ステランティス」(ここにも仏政府は出資している)として14ブランドを抱えるグローバル自動車メーカーに脱却し、ルノーを引き離してきている。

 15、16日にルノーのルカ・デメオCEOが来日し、スナール会長とともに日産の内田社長、三菱自の加藤社長らが会談したがすぐには結論が出ない状況だ。結局は仏政府がルノーをどう位置付けようとしているのか。現状では三菱自を含む3社連合維持を望む一方で、出資引き下げそのものには表立って反対は示していないものの、果たして仏政府の思惑いかんでその方向が定まりそうだ。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)