政府が年内にも公募する洋上風力発電プロジェクトのコンペ第2弾について、参戦を予定していた三菱商事が撤退する見通しとなった。超ド級の価格破壊によって、第1弾コンペを全勝した三菱商事の電撃的な辞退表明は、エネルギー業界に波紋を広げている。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
官報にひっそりと記された
三菱商事の重大発表
それは重大発表にもかかわらず、まことに小さなお知らせだった。
11月11日付官報54ページの片隅に記された「(仮称)秋田県八峰町・能代市における洋上風力発電事業の廃止に関する公告」。三菱商事グループの三菱商事洋上風力が「当社は、対象事業を実施しない」ことを縦13センチ、横5センチのスペースで淡々と伝えた。
昨年末に開札された政府の洋上風力発電プロジェクトのコンペ第1弾で、三菱商事は圧倒的な価格破壊によって、秋田県と千葉県の計3エリアを総取りした。その余勢を駆って、三菱商事は政府コンペ第2弾の対象エリアである秋田県八峰町・能代市沖のプロジェクトにも参戦する予定だった。
三菱商事の子会社である三菱商事エナジーソリューションズが昨年6月に、事業化を前提とする環境影響評価(環境アセス)を実施していた。三菱商事の参戦は間違いないとみられていたのだ。
ところが、である。三菱商事は、このエリアから“撤退”することを宣言したのだ。
この件について三菱商事はプレスリリースを発表しておらず、ダイヤモンド編集部の問い合わせに対して「公募のルールに基づき、回答を差し控える」としている。
なぜ、三菱商事が秋田県八峰町・能代市沖の洋上風力発電プロジェクトを撤退することになったのか。その裏事情に迫った。
次ページからは、業界関係者への取材に基づいて浮かび上がった、三菱商事の撤退を決定づけたとみられる「二大要因」について詳報する。さらに、洋上風力プロジェクトの第2ラウンドを巡り、関係者の間でささやかれる、辞退したはずの三菱商事の名も交えた驚愕の「ウルトラCシナリオ」も明らかにしたい。