沈むゼネコン 踊る不動産#3Photo by Ryo Horiuchi

三菱商事が“価格破壊”によって総取りした洋上風力発電プロジェクトについて、大手ゼネコンの鹿島が建設工事を担うことになった。このプロジェクトを巡って巨額赤字の懸念が噴出している。特集『沈むゼネコン 踊る不動産』(全20回)の#3では、三菱商事と鹿島でコスト負担を押し付け合う舞台裏に迫った。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

ウクライナ危機で資源高に拍車
「ガラリと情勢が変わった」

 2022年2月24日――。大手ゼネコンの鹿島にとって「運命の日」として、会社の歴史に長く刻み込まれる日付になるかもしれない。

 鹿島はこの日、三菱商事が秋田県能代市、三種町、男鹿市沖と同県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖の3エリアで手掛ける洋上風力発電プロジェクトについて、オランダの海洋土木大手バンオードと組んで建設工事に参画すると発表した。

 鹿島は、丸紅が「商業化国内第1号」として、秋田県秋田市と能代市で展開する洋上風力発電プロジェクトでも建設工事を担っている。

 政府は脱炭素の切り札として、洋上風力発電分野が30年までに最大15兆円という巨大な市場になると期待している。鹿島はこの分野で施工実績をまた一つ積み重ねることになり、他の大手ゼネコンをリードすることとなった。

 ところが、である。同じ日、世界を震撼させる大事変が起きた。ロシアがウクライナに侵攻したのだ。ウクライナ危機の勃発で世界経済は混乱し、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した資源高にさらに拍車を掛けた。

 三菱商事関係者は「コンペに参加したときとはガラリと情勢が変わってしまった」と頭を抱える。三菱商事は政府の洋上風力発電プロジェクトのコンペを「価格破壊」によって勝ち取っていた。その上さらなる資源高となり、プロジェクトの採算が大きく狂ったのだ。

 次ページでは、エネルギー業界関係者とゼネコン業界関係者の双方が見立てる巨額赤字の金額、さらに三菱商事と鹿島がそのコスト負担を押し付け合う、つばぜり合いの舞台裏を明らかにする。