変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋している本連載の書下ろし特別編をお届けする。

「何歳になっても活躍し続ける人」は、どのように「リスキリング」しているのか?Photo: Adobe Stock

先進国では劇的なイノベーションは起きない

 デジタル化の進展により、現代ではコンピュータが手のひらに乗り、人工知能がランチに何を食べるべきかアドバイスしてくれるようになりました。一見大きな変化が起きているように感じますが、私たちの生活の基本である衣・食・住は、便利にこそなっているものの、ここ数十年間劇的な変化は遂げていません。

 片や、東南アジアでは、かつての日本でそうであったように、給与水準の上昇に合わせて家を建て、自動車やテレビ、生活を便利にするための白物家電を購入し、庶民の生活に劇的な変化が訪れています。家にいながらアプリ一つで食事や生活必需品の購入、診療やマッサージまで受けることのできるスーパーアプリも新興国では普及しています。

 すでに物質的に満たされている先進国では、このような劇的な変化は見込めないでしょう。また、新たなサービスを導入するにしても、既得権益や規制によって既存サービス提供者による強固な抵抗にあうことは容易に想像できます。

先進国では大企業グループによる大量生産モデルは終わった

 先進国では物質的な豊かさを満たすための大企業グループによる大量生産モデルは終わりました。一定程度、観光地や都市の再開発は行われるはずですが、全国民の生活を劇的に変えるようなイノベーションは今後起きないでしょう。

 一方で、デジタル化とグローバル化の進展によって、少人数でできることが増えました。動画を作って投稿したり、書籍を出版したりすることはもちろん、専門家が集まれば世界中からパーツを購入して電気自動車を作ることもできるでしょう。

 このような時代には、会社に就職して働くためのスキルを身につけても仕方がありません。会社が決めた方針を着実に実現していくためのメンバーシップ型やジョブ型の人事制度の時代は終わりました。

大事なのはアジャイル仕事術を使いこなせる「個」の存在

 この先は、他人が設定したゴールに向かうためのスキルではなく、自ら問いを立て、様々な人たちと連携して結果を出していくためのアジャイル仕事術が必要になります

 先進国で問われている「リスキリング」とは、転職のためのスキルを身につけることではなく、「個」の力を最大限発揮するためのスキルを身につけることに他なりません。

 また、仮に会社に勤務するとしても、今後多くの業務が人工知能やロボットに置き換えられます。20年前と比較したときルーチン業務よりもプロジェクトに従事している人が圧倒的に増えているのはそのような理由からです。

 したがって、会社勤務を続けるとしても、実務スキルや専門スキルなど個別のビジネススキルを身につける前に、まずは他部門や他社の人たちと連携して結果を出すためのアジャイル仕事術を身につけることが重要です。

アジャイル仕事術』では、人生100年時代を生き抜くための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。