東京ガスのチラシ東京ガスのチラシ Photo by Masataka Tsuchimoto

電力・ガスの小売り自由化で、両業界の壮絶な殴り合いが始まって約6年。右肩下がりが続いてきた大手ガス3社(東京、大阪、東邦)の都市ガス顧客数に底打ち感が出始めた。しかし、ガス業界関係者の表情は決して明るくない。なぜか。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

小売り自由化で顧客流出続くも
大手3社に「底打ち感」!?

 国内ガス最大手、東京ガスの都市ガスの顧客数に今年、ある異変が起きた。2022年6月、四半期ベースで久方ぶりにプラス(約1000件増)に転じたのである。

 かつて東京ガスの都市ガスの顧客数は1000万件超を誇っていた。だが、ガス小売りが自由化した17年4月以降、東京電力エナジーパートナー(東電EP)など電力業界の新規参入によって競争が激化。自由化直後を除けば顧客数は減少の一途をたどり、22年3月は868万8000件まで落ち込んでいた。

「自由化から5年が過ぎていよいよ顧客の移動が落ち着いてきたことが大きい」。東京ガスはそう分析した上で、「引っ越しが集中する春先は客の会社間移動が多い。客の引き留め、獲得のための広告宣伝効果が出た」と強調する。

 実は、この底打ち感は同じくガス大手の大阪ガス、東邦ガスでも見られる。では、ガス業界の顧客数は本当に下げ止まったのか。内情を探ると、ガス業界関係者が手放しでは喜べない足元の特殊事情が浮かび上がってきた。