東京電力ホールディングスなど大手電力10社の2023年3月期第2四半期決算は、燃料価格上昇と円安の直撃で9社が最終赤字となる総崩れの結果となった。各社は危機を乗り越えようと家庭向け電気料金の値上げをもくろむが、状況はそう単純ではない。大手電力の復活シナリオには、処分間近とされるカルテル問題が影を落とす。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
全国大手電力の中間期決算
10社中9社が最終赤字に
東京電力ホールディングス(HD)など大手電力10社の2023年3月期第2四半期決算が1日に出そろい、ほぼ全社が最終赤字という惨憺(さんたん)たる結果となった。
第1四半期決算では北海道・中部・四国の3電力がわずかに最終黒字だったが、このうち北海道・中部電力が新たに“赤字グループ”に仲間入りした。伊方原子力発電所が稼働している四国電力は最終黒字をなんとか確保したものの、通期業績は250億円の最終赤字となる見通しだ。
10社に共通する業績悪化の主要因は、火力発電所で使う液化天然ガス(LNG)といった燃料価格の高騰と円安だ。発電コストが上昇する一方で、電気料金への転嫁が間に合っていなかったり転嫁幅の上限に達していたりするため、売れば売るほど損をする“逆ざや”地獄に陥っているのだ。
財務悪化を食い止める即効策が、値上げである。
値上げが受け入れられやすい環境も整いつつある。政府は今秋に策定した総合経済対策で高騰する家庭の電気代の支援策を打ち出した。中身は23年1月以降、1カ月の電気使用量が400キロワット時の標準家庭で月約2800円を軽減するというものだ。高圧契約を結ぶ企業にも、1キロワット時3.5円を補助する。電力会社からすれば「値上げを言い出しやすい情勢」になってきた。
だが、電力各社の値上げに対する判断は分かれた。これまでに、東北・北陸・中国・四国・沖縄の各電力と東京電力ホールディングスが、「規制料金」(主に家庭向けの低圧区分)の値上げまたは値上げ検討を表明した。対照的に、その他の4電力(北海道・中部・関西・九州)は値上げを否定するか、少なくとも明言していない。
もちろん背景には、各電力会社で財務棄損の度合いが異なることがある。ただし、それだけではない。処分が“秒読み”とされる「カルテル問題」の動向によっては、電力各社の値上げによる復活シナリオが雲散霧消する恐れがあるのだ。
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