電卓を打つ手元写真はイメージです Photo:PIXTA

「相続税と贈与税をより一体的に捉えて」との文言が話題となった令和3年度税制改正大綱だが、翌年の大綱でも具体策は示されなかった。しかし、岸田内閣の「資産所得倍増計画」により、にわかに「相続税と贈与税の一体化」が前進し始めたようだ。(税理士、岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)

「相続税と贈与税の一体化」の議論が
政府税調でついに始まった!

 令和3年度に引き続き、令和4年度税制改正大綱でも、「相続税と贈与税の一体化」は「本格的な検討を進める」との表現にとどまった。その後も特に具体策は示されなかったため、相続税と贈与税が一体的に課税されるのは、まだまだ先のことになると楽観視する見方もあった。

 しかし、ここにきて、その「本格的な検討」がいよいよ開始された。政府税制調査会は、22年10月5日、21日、26日と立て続けに「相続税・贈与税に関する専門家会合」を開催。相続税・贈与税の現状、相続時精算課税と暦年課税についての資料などが配布されている。

 相続時精算課税とは、原則、60歳以上の父母または祖父母などから、成人した子または孫などへ財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度。贈与額2500万円まで贈与税が発生しないが、相続時、その贈与財産額も合計した相続財産額に相続税が課される。また、贈与税申告が必要となる。

 一方、暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間の贈与財産額が、基礎控除額110万円以内であれば非課税となる制度。基礎控除額以下なら、贈与税申告も不要だ。また、相続時精算課税とは併用できない。そのため、一般には「暦年贈与」として、暦年課税を選択するほうが多い。

 ただし、暦年課税を適用しての毎年の贈与額が基礎控除内だったとしても、相続が発生した場合、死亡前3年分の贈与財産には相続税が課される。「相続税・贈与税に関する専門家会合」では、この相続税加算する死亡前の対象期間を、現行制度での3年よりも延長する方向で一致したそうだ。

 老齢世代から若年世代への資産の早期移転を図るためで、生前贈与は早いほうが良いといわれるが、期間延長されればより早く贈与したほうが節税対策につながる。議論がまとまれば、年末に公表される税制改正大綱に盛り込まれる予定だ。

 ところで、岸田首相肝いりの「資産所得倍増計画」が「新しい資本主義実現会議」で具体案策定を急ぐのと並行して、「相続税と贈与税の一体化」も始動。この二つは連動しているのだろうか?