事業者向けの電力の販売を巡る関西電力、中部電力、中国電力、九州電力のカルテル疑惑で、公正取引委員会が今年度中に数百億円規模の課徴金を命じる見通しとなった。影響は個社の「巨額特損」リスクだけではない。目下、最大のテーマである電気代値上げや、業界団体のトップ人事を巡り、業界の混迷が深まりそうだ。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
国民注目のカルテル案件は
「3回さらされる」
公正取引委員会(公取委)は近くカルテル疑惑が浮上している複数の大手電力会社へ総額数百億円規模の課徴金納付を命じる方針を固めた。大手メディアが25日夜に一斉に報じた。
経緯を振り返ると、公取委は2021年4~10月、独占禁止法違反(不当な取引制限)の容疑で関西電力、中部電力、九州電力、中国電力などに立ち入り検査を実施していた。顧客の獲得を制限するカルテルを結んでいた疑いが強まったためだ。
「国民注目のカルテル案件は『公取委の立ち入り検査、公取委から対象企業への意見聴取、行政処分』の3回のタイミングでさらされる」。過去にカルテル問題の当事者となった別業界の関係者はそう話す。自らの役割をアピールしたい公取委からすれば「一粒で三度おいしい」が通例となっており、今回の一斉報道は意見聴取前後のタイミングとみられる。
過去のカルテル問題では意見聴取から2カ月前後で行政処分が出るケースが多く、今回の大手電力カルテル問題は年度内に決着がつく見通しとなった。
大手電力はいずれも3月期決算。今期は資源高でただでさえ業績悪化に苦しんでいるが、課徴金の支払いによる特別損失の計上でさらに財務が傷むことがほぼ確実となった。
詳細を付言すれば、公取委に協力的だった社は課徴金が「減額」または「免除(最大1社)」となるにせよ、レピュテーションリスクは等しく受ける。
だが、前代未聞のカルテル問題の影響は個社の業績にとどまらない。業界の最大のテーマともいえる電気代の値上げ議論に加え、異例の体制が続いている業界団体のトップ人事を巡り、業界の混迷はより深まりそうだ。