コロナ禍の収束を待たずに、今度は資源・資材の高騰や円安急進が企業を揺さぶっている。上場100社超、30業界を上回る月次業績データをつぶさに見ると、企業の再起力において明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移を基に、「嵐」から「快晴」まで6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「コロナで明暗!【月次版】業界天気図」。今回は、7〜9月度の旅行編だ。
HIS、阪急交通は
3カ月連続で前年同月比3桁のプラスも実態は…
旅行の主要3社が発表した7〜9月度の月次業績データは、以下の結果となった。
◯HIS(エイチ・アイ・エス)の旅行総取扱高
7月度:前年同月比452.4%(352.4%増)
8月度:同549.0%(449.0%増)
9月度:同719.9%(619.9%増)
◯近畿日本ツーリスト(KNT-CTホールディングス〈HD〉)の取扱額実績
7月度:前年同月比178.4%(78.4%増)
8月度:同230.2%(130.2%増)
9月度:同88.9%(11.1%減)
◯阪急交通社(阪急阪神Hホールディングス〈HD〉)の総取扱高
7月度:前年同月比428.0%(328.0%増)
8月度:同547.8%(447.8%増)
9月度:同506.3%(406.3%増)
22年7~9月の業績はHIS、阪急交通社の2社が3カ月連続で前年同月比プラス、しかも3桁のプラスを記録している。つまり、業績が何倍にも膨れ上がったということだ。近畿日本ツーリストにおいても、9月は前年同月比マイナスとなったものの、7~8月は他の2社と同様に前年同月比で3桁のプラスだった。
3年ぶりに行動制限のない夏休みとなったことや、水際対策の緩和で旅行業界は一気に息を吹き返したようにも見える。だが、この数字はあくまで、新型コロナウイルス禍で人々の行動が制限され、旅行と縁遠い生活を強いられていた21年との比較だ。
実は、コロナ前の業績と比較してみると、旅行業界の悲惨な状況があらわになる。次のページからは時系列でデータを分析し、旅行業界の「真の回復状況」を詳しく見ていこう。