「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする。
「働き方改革」で格差拡大!?
第二次電通過労死事件をきっかけとする政府主導の「働き方改革」によって、労働時間が劇的に減る大企業が続出した。一方で、もとから業界として年収水準が高かった大手マスコミや総合商社は、拘束時間(≒サービス残業)が減ったものの給料ベースは高いままなので、時間単価が劇的に上がり、労働時間も短くて休日も多いのに給料だけは高い──というパラダイス状態になった。
これが、この6~7年での最大の変化である。あの会社は給料高いけど、その分だけ拘束時間も長くて激務だからなぁ──という、外野から見た従来の納得感が崩れ、露骨に“時給格差”が拡大したのである。
そこに、2020年春からの新型コロナ禍が始まり、リモートワークが入り込み、グーグルやリクルートなどIT系を中心に、場所に拘束されない業態では、「原則出社ナシのリモートワーク」が定着。場所に拘束される職種(鉄道、ゼネコン、医療、食品……など「現場」があるエッセンシャルワーカー)との間で、“生活の柔軟性”格差も広がった。政府は、介護士や保育士の給与を2022年春から3%上げたが、焼け石に水である。
格差拡大のなか、職種&会社選びの重要性は、労働の「負荷」という切り口からも、高まっている。
「週5日も出社しなくても、
意外と仕事が回ってしまいました…」
コロナ禍がもたらした決定的な福音は、リモートワークの快適さだった。「実は週5日も出社しなくたって業務は問題なく回る」「出社にともなう人間関係など余計なストレスを感じずに働ける」「通勤という120%無駄な時間を減らせる」という事実に、大多数の社員が気づいてしまった。
これは、二度とコロナ前の世界には戻れない、不可逆的変化である。
労働時間については、残業時間は短くなり、賃金がつかないサービス残業も減り、各社で違いがなくなってきた。正直、15年ほど前と比べると、取材していて面白くなくなってきたな──というのが実感だ。当時は「24時間働けますか」だった昭和バブル期の延長で、無茶苦茶な会社ばかりだった。