「Web3」の本質とは?
星:私は教育者なので、教育とコミュニティというところでいうと、学校が地域コミュニティのハブとして機能する時代が、数十年前の先進国にはかなり存在していました。
ですが、近年急速に教育とコミュニティが分離してきています。
コミュニティ自体が形骸化し、システムだけが残って、地域にいる人々のつながりが分断されていく。
学校では「学習の分散化」も始まっていて、英語は学校内だけでなく、オンラインでネイティブの先生と話せるようにしていくなど、今まで学校内にあった学びが外に出てきています。
このままだと今までの「コミュニティありきの教育」のよさがなくなっていくと感じています。
子どもたちの感情の発達や、社会性を育むといった学校の機能は地域コミュニティが健全であってこそ成立しうると思います。
そこで、私自身、武井さんがやっているWeb3を使いながらのコミュニティ活性化のプロジェクトに非常に興味を持っています。
武井さんは「Web3」と教育の接点をどのようにとらえていますか?
武井:教育は公共的なもので、資本主義の原理で扱ってはいけないものだと思っています。教育を受ける権利はすべての人に等しくあるべきです。
ですが、国が今すぐすべての教育を無償化するのは難しい。
そこで、Web3の教育プロジェクトが生まれてきています。
たとえば、Web3でユニバーサルベーシックインカムを出すプロジェクトが生まれ始めていて、すでに教育を無償化するDAOも存在しています。
Web3の本質はコモンズ化していくこと。
つまり、誰かの私的所有物を増やすのではなく、みんなが使えるもの(共有資産)を増やしていくことが「Web3の本質」です。
そのような意味で、教育もこの上に間違いなく乗っかっていくと私は思っています。
教育と経営の意外な共通点
また、うちも3人子どもがいて、僕自身も教育に関して勉強してきました。
その中で、「自律分散的な経営」と子どもの多様性を重視した「オルタナティブ教育」の思想の根本がまったく一緒だと気づいたんです。
自律分散的経営もオルタナティブ教育も、外側の答えや社会に適合させるのではなく、その人自身がどんな欲求を持って何をしたいか、というところが起点となっています。
だから、私が実践している企業理念をつくらない経営では、「これに従え」ではなく、「あなたは何がしたいのか」から始まる。
これは、教育の本質と一緒だと思うんですよね。
星:以前、武井さんとの対話の中で、経営と教育の共通する部分として「自律」「分散」「つながり」という3つのベクトルがあるという話がありました。
私の言葉で「Design Your Learning」と言ってきましたが、「生徒が自分で自分の学びをデザインしていけるか」という点で共通点を見出し、とても共感しました。
元々あるシステムから始めるのではなく、「Design Your Learningしてもらおう」「社員に自由でいてもらおう」という部分が軸になり、まさに「みんなが使える資産を、みんなで増やしていく」という本質が重なりますね。
それが実際に実現できるかどうかは、結局はそのコミュニティに属する人たちで決まるのですね。
今回の対談、ありがとうございました。