スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で2020年は全米の大学進学校1位となった。世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代にシリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となっている。ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も、「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」と語った。6/18に「情報7daysニュースキャスター」、7/2に「朝日新聞be on Saturdayフロントランナー」出演で話題の著者が、世界最先端の「最新脳科学に基づく生き抜く力」を紹介する本連載。今回は星校長と異色の起業家との対談前編をお届けしよう。

矢印Photo: Adobe Stock

「ミュージシャン」から「起業家」に転身したキッカケ

ミュージシャンから起業家に転身したぼくが、会社から上下関係を一掃した理由武井浩三(たけい・こうぞう)
社会活動家/社会システムデザイナー
神奈川県横浜市生まれ。高校卒業後、音楽を学ぶために米国ロサンゼルスに留学。帰国後、友人とともにアパレル系インターネットメディアの会社を起業するもうまくいかず、1年で売却。2007年に不動産ITサービスを提供するダイヤモンドメディア株式会社を創業(2019年に退任)。その後も立ち上げた数々の組織で「自然経営」を採り入れ、第3回ホワイト企業大賞を受賞。自然経営に基づいたシステムデザインで、既存の社会システムの刷新を目指す。

星友啓(以下、星):今回は対談ゲストに社会システムデザイナーの武井浩三(たけい・こうぞう)さんをお招きしました。

 武井さんは高校卒業後、音楽を学ぶためにロサンゼルスに留学され、帰国後、2007年に不動産ITサービスを提供するダイヤモンドメディア株式会社を創業されています。

 この会社は、これからの組織のあり方として近年大きな注目を集めている「ティール組織」の日本における代表的事例といわれており、武井さん自身も「自律分散型経営」の日本における先駆者です。

 今回の対談では、昨今、日本でも急速に注目を集めている「Web3」、そして新しい企業の経営の形などについてお話しいただきます。

 まずはじめのトピックとして、武井さんが起業家の道に進んだきっかけを深掘りします。

 というのも、日本国内で次々に先進的な切り口から、多くのビジネスを手がける武井さんですが、元々はミュージシャンとして音楽活動に勤しんでいたというからです。

 一体どのような経緯があって、ミュージシャンから起業家の道に転身されたのでしょうか?

 まずは、そのきっかけからお伺いしていきましょう。

武井浩三(以下、武井):私は昔から「起業家になろう」という志を持っていたわけではありません。

 実は、学生時代はミュージシャンになること以外考えていなかったくらいに音楽に夢中でした。

 学生時代の留学先がアメリカで、いわゆるコミュニティカレッジだったのですが、いろんな人と出会っていく中で、私にとって音楽は一つの自己表現になっていきました。

 その頃から私は社会に対して、「自分が何者なのか」「自分自身を失いたくない」といった漠然とした恐怖感がありました。

 日本にいた高校生の頃は、ビジネスが学生社会と社会人の世界の間にある、大きな隔たりのようなものに見えていたんです。

 日本で働くとなると「〇〇株式会社の〇〇です」のように、何かしらの組織に属する必要があり、社会に組み込まれる感覚がありました。

 そんなとき、留学先で出会った友人がみんな当たり前に起業している姿を見て、アメリカのビジネスは日本より選択肢が広いと感じたんです。

 ビジネスは、自分の得意なものや好きなことを武器にして、他の人が困っていることを解決することで初めて成り立ちますよね。

 それを気づいたときに、「自己表現の一つとしてのビジネス」に関心を持ち始めました。

星:大きな会社の枠にとらわれない形で自己表現する起業家・武井さんのスピリットは、最初に志した音楽などのアーティストとしてのスピリットと共通しているような気がします。