困窮者支援と切っても切れない生活保護
報告書は「引き下げない」とも記載せず

 藤田氏は、まず、生活保護申請時の扶養照会強化に対し、危惧を表明した。具体的には、42ページの「(福祉事務所は)『過去に保護を受給していた者及びその扶養義務者』も対象とすることを追加・明確化(42ページ)」「福祉事務所は(中略)受給者や扶養義務者等に対し、保護の決定及び必要な説明を求めることができる旨の権限を設ける(42ページ)」という記述である。意図されているのは、おそらく申請そのものの抑制であるからだ。

 この意見は、「なお、この場合、保護の申請が抑制されるおそれがあるとの懸念が示されたことに十分配慮することが必要である。(42ページ)」として、報告書に反映された。

 次に、「生活支援の根幹は生活費」と強調した。さらに、この特別部会に先立つ1月18日、基準部会の報告書が取りまとめられ、相次いで「生活保護基準は引き下げ」と報道されていたことを受け、「特別部会は生活保護基準引き下げに反対、という文言をどこかに入れてください」と発言した。

 基準部会長でもある委員の駒村康平氏(慶応義塾大学・経済学)は、基準部会での結論を簡単に紹介した。内容はほぼ、基準部会報告書に記載されているとおりの内容であった。最後に「基準部会では『引き上げる』『引き下げる』という方針は示していません」と結んだ。

 藤田氏は、

「では、特別部会の報告書に『引き下げない』と記載してよいはずです」

 と食い下がり、困窮者支援に関する財源の必要性を改めて強調した。さらに、現在でも不十分な財源を減らされないためにも、生活保護基準引き下げに反対することは重要であると主張し、「生活保護基準を引き下げないように」という文言を特別部会の報告書に含める必要性を述べた。

 結局、藤田氏の提言が反映されることはなかった。基準部会長の宮本太郎氏(北海道大学・政治学)は「難しい」と難色を示し、事務局は「特別部会の所管事項ではないので、報告書に取りまとめるのは不適切」と退けた。

 しかし特別部会の終了後、宮本氏が藤田氏と握手し、藤田氏の右手を両手で握り、「頑張ってください」と激励していたことを、筆者は書き残しておきたい。福祉論者として知られている宮本氏自身にも、個人的な社会保障への思いと部会長としての立場の間で、激しい葛藤があったかもしれない。

自殺、孤独死へと追い詰めないか
特別部会報告書に対する懸念と疑問

 この特別部会報告書に関し、筆者が最も懸念しているのは、「中間的就労」の有効性と今後である。

 最悪の可能性として考えられることは、困窮者を対象とした「中間的就労」が、困窮者に対する事実上の強制労働となることである。生活保護を利用すると、親族ともども将来にわたって監視の対象とされる方向での法改正も検討されている。それでも、他の選択肢がなくなった人は、今後も、やむを得ず生活保護を申請するか、あるいは自殺や孤独死へと追い詰められていくかであろう。