今期債務超過に陥った東京電力ホールディングスの小売子会社、東京電力エナジーパートナー(EP)は増資でなんとか窮地をしのいだ。その東電EPが来春までに掲げる節電目標はなんと「ほぼ沖縄電力の販売量半年分」だ。特集『新電力 節電地獄』(全11回)の#9では、大風呂敷を広げざるを得ない東電EPの深刻な台所事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
東電の節電目標は
「28億キロワット時」
業界団体の電気事業連合会(電事連)は大手電力10社で構成されるが、電力販売量はピンキリである。
最も電力販売量の少ないのは沖縄電力。同社の電力販売量は2021年度、約70億キロワット時だった。
逆に電力販売量の最大手は東京電力ホールディングス(HD)の電力小売子会社である東京電力エナジーパートナー(EP)。首都圏は全国最大の電力消費エリア。同社は新電力の攻勢を受けて年々販売量を減らしてきたが、それでも2021年度で1782億キロワット時を誇る。
そんな東電EPが、今冬の国の節電プログラム終了(2023年3月)までの節電目標として掲げた値は、なんと28億キロワット時である。
この数字は独自に節電プログラムを始めた7月からの合算値なのだが、それでも「ほぼ沖縄電力の販売量の半年分」を春先までに節電しようともくろむのである。同社はテレビCMなどでアピールに懸命で、これまでに家庭向けの節電プログラムに約71万人(12月4日時点)、法人向け節電プログラムに約7万件(11月30日時点)が参加したという。
国が補助金を投入して今冬に節電プログラムを主導する目的は、電力需給逼迫の回避や火力発電の主燃料である液化天然ガス(LNG)輸入が途絶えるリスクへの備えだった。
東電EPにもそれらに賛同する思いは当然あろう。だが、節電プログラムへの過度ともいえるコミットメントには、深刻な事情が隠されている。今期は一時、債務超過に陥った東電EPが大風呂敷ともいえる節電目標を掲げたのはなぜか。