節電プログラムの実施により、電力会社を支援するシステムベンダーで受注バブルが起きた。ソフトバンク系のSBパワー、ENECHANGE(エネチェンジ)など電力系の強力なシステムベンダーを抑え、受注社数でなんと非電力系の「あるベンチャー」がトップとなった。特集『新電力 節電地獄』(全11回)の#6では、このベンチャーの正体とともに、激しい受注競争に競り勝つことができた強みを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
ドタバタの「国の節電プログラム」
ベンダー受注競争は意外な結果に
12月から始まった、家庭や法人に節電を促す国の節電プログラムは8月に概要が示された。節電を達成した場合の特典の詳細が発表されたのは、開始わずか2カ月前の10月のことだ。
この急展開になんとかついて来られた電力会社は、大手電力と新電力を合わせて、全体の約4割に当たる300社ほど。しかし、節電プログラムがスタートした12月に入っても、まだ自社の節電プログラムの詳細を発表できていない会社は少なくなかった。いまだに国の「採択待ち」の状態だったのだ。
日本初の本格的な節電の冬を迎え、電力会社だけでなく、監督官庁の資源エネルギー庁もドタバタ騒ぎを繰り広げている。
一方、国の主導で一挙に進められた節電プログラムは、バブルを生み出した。それが、電力会社の節電プログラムをサポートするシステムベンダーによる受注バブルである。
ベンダーは、ソフトバンク傘下のSBパワー、ENECHANGE(エネチェンジ)、 2013年にソニーからカーブアウトしたインフォメティスなどが主要プレーヤーだったが、バブルによって受注競争は大小ベンダーが入り乱れることになった。
では激しい受注競争の結果はどうだったのか。結果の一部を示すと、システムを提供する電力会社が抱える「顧客数」ベースでは、SBパワーがトップとなった。
同社はこの冬、電力小売り最大手の東京電力エナジーパートナー(東京電力ホールディングスの電力小売子会社)、九州電力、東北電力、北陸電力、東邦ガスといった大手電力&大手ガス計5社のシステムを支援する。
加えて、自らも新電力大手であり、なんと契約者の半分に当たる約100万世帯もが節電プログラムに参加するのだ。独自の節電プログラムに20年から取り組んできた実績が評価されたようだ。
ところが、ダイヤモンド編集部の集計で意外な結果が浮かび上がってきた。受注した電力会社の数で、電力系の大手システムベンダーを差し置いて、非電力系で五反田バレー発のITベンチャーがトップになったのである。
次ページでは、ITベンチャーの正体を明らかにするとともに、多くの電力会社から選ばれる決め手となった強みを明らかにする。