東京電力東京電力ホールディングス本社。「東電EP社員の士気はかなり下がっている」と、ある東電OBは心配する Photo:JIJI

東京電力ホールディングスの小売子会社が債務超過に陥った。燃料価格高騰による採算悪化が主な要因。今春、共に「自己資本比率6%台」の危険水域にいた中部電力小売子会社との差は?(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

東京電力エナジーパートナーが
約67億円の債務超過に

「業界王者なのにショックだった。電力小売り事業はどこも構造的にもうからないことの象徴だ」と、西日本の大手電力会社の社員はぼやいた。

 電力業界最大手、東京電力ホールディングス(HD)の電力小売完全子会社である東京電力エナジーパートナー(東電EP、従業員数3187人)が2023年3月期第1四半期に約67億円の債務超過に陥った。15年の同社設立以来、債務超過は初。

 振り返れば2000年の特別高圧区分を皮切りに電力小売りは段階的に自由化され、徐々に全国乱世となった。とはいえ旧東京電力が長年、電力大消費地の首都圏をホームエリアとしてきたことから、東電には大きなアドバンテージがあった。

 東電EPは、「旧一般電気事業者(旧一電)」と呼ばれる大手電力と「新電力」と呼ばれる小売り自由化後の新規参入企業の合計約600社(22年4月時点の販売実績がある企業)の中で、電力販売量トップを独走してきたのである。

 しかし競争環境激化による販売量減少、燃料価格高騰による“逆ざや”発生などで、東電EPは22年3月期第1四半期からたびたび経常損失を計上していた。そして23年3月期第1四半期の経常損失908億円がとどめとなった。