心を鬼にしなくていい
上林周平
心を鬼にして部下の管理を徹底する強いボスは優秀です。
人の個性や多様性を生かすとはいうものの、結局は仕組みと管理で凡事徹底することが合理的だという人もいます。
確かに、人材を消費する「資源」と捉えれば、その通りでしょう。やり方に合わない部下が離脱するかもしれませんが、大量に新卒を採用すれば2割は優秀な人が現れるといいます。
しかし、雇用が流動化し、限られた人材を取り合うような環境では、そうもいきません。特に中小企業は、求人を出して人を募るだけでも大変です。そんな中でせっかく獲得できた人材は「資本」として、投資した以上の成果を引き出すことが求められます。
そんなときに現場の上司に必要なのは、鬼の管理ではなく、柔軟な関係性です。
私の会社に、もともとは営業担当として採用したエンジニアがいます。彼はなかなか営業で成果を出せず、何度か私も話をしました。すると対話をしているうちに、彼はガンガン営業するのは不得手でも、ロジカルな思考に長けていることに気がつきます。
そこで、アプリを開発する部隊のエンジニアとして頑張ってもらうことにしたら、めきめきと能力を開花させていきました。
彼を営業の仕組みでガチガチに管理すれば、最低限の数字は残せるようになったかもしれません。でも私は、彼が新しい仕事で活躍できるようになって良かったと思います。もちろん新たなスキルや知識を習得してもらう投資は必要でしたが、それ以上のリターンを得られています。
こうした柔軟な生かし方ができるのは、日々のコミュニケーションのおかげです。
上林周平 著
管理型の強いボスは、基本的に部下を一律平等に扱い、減点主義で、欠点をなくすアプローチを行います。そう割り切ったほうが楽な面もあります。一方で人の能力や個性を生かすのであれば、部下の強みや価値を一緒に見つけていく必要があると思います。時間はかかりますが、それは資本に対する投資です。
あなたは、部下や後輩のことをどこまで知っているでしょうか。
生まれ故郷、出身校、趣味、好きな食べ物…どんなことでもいいのですが、とにかく興味を持つことが大事です。
今の若い世代は仕事とプライベートをはっきりと分け、上司との付き合いを嫌ったりする傾向があるといいますが、存在を承認されたい欲求は持っています。
とはいえ上司から一方的に根掘り葉掘り問いただすと、パワハラやセクハラになりかねません。まずは上司から自己開示をするのが得策です。
上司が置かれている立場や、悩み、弱みも思い切って開示してみてください。自分が最強のボスであるよりも、部下こそが強いと言える上司が、人を生かせるのではないかと思います。