アメリカ人にとってのクリスマスは
実は日本人の正月の過ごし方と似ている

 アメリカでも知り合いがいない街に引っ越したことが何度もあったけれど、自分が属している宗派の教会を見つけて礼拝に参加すればすぐに友だちができ、新しい街になじむことができたそうです。

 アメリカでは土地が広大なので、屋根に十字架がついている教会は見つけやすい。でも日本では、高い建物が多く、屋根の十字架を頼りに教会を探してもなかなか見つからず、苦労したようです。上を見上げながら一生懸命に教会を探して街を歩く彼女の姿を想像すると、胸が痛みます。

 教会というのは、神に祈りをささげる信仰の場であると同時に、人とつながるためのコミュニティでもあることに気づかされます。同じ宗教を信じる人同士であれば価値観も近く、友だちになりやすいので、「新しい街に引っ越したらまずは教会を探す」というのも納得です。しかし日本では、新しい街に引っ越したときに、コミュニティになじむために、まずは信仰を同じくする人がいる場を探すという話はめったに聞きませんね。

 前述の通り、アメリカでは、生活や習慣に信仰が染み込んでいます。宗教もさまざまです。

 日本では年末になると、別れ際に「良いお年を」という言葉を交わしますよね。私はアメリカで大学時代を過ごしたのですが、クリスマス前には「Merry Christmas!」(素敵なクリスマスを!)と言葉を交わす人々の姿をよく見ました。

 アメリカ人にとってのクリスマスは、実は日本人のお正月の過ごし方とかなり似ている印象です。アメリカではクリスマスは、離れて暮らす家族の元に帰省する人も多く、家族で集まって過ごしたり、普段はめったに教会に行かないけれどクリスマスだけはミサへ出席する人もいたりします。お正月の時期だけ神社へ初詣に行く日本人と少し似ていますね。また、クリスマスに作る恒例のお料理があったりと、クリスマスの習慣も人や家庭によってさまざまなようです。

 当時、留学生だった私は、現地の人がどのようにクリスマスを過ごすのか興味津々で、周りの友だちに「How do you celebrate Christmas?」(クリスマスはどんなふうにお祝いするの?)と聞いて回りました。するとある時、ひとりの友人から、「私はユダヤ教徒だからクリスマスはお祝いしない。家族で祝うのはハヌカーなの」という答えが返ってきました。

 クリスマスはキリスト教の祝日であり、アメリカにはキリスト教以外にも、多くの人種や宗教の人たちがいます。考えてみれば当然のことなのですが、宗教が違えばホリデーもお祝いの仕方も変わるのです。

 そのことをあまり意識せずに、のんきに周囲に質問を繰り返していたことに気づいて少し恥ずかしくなってしまった私にその友人は、「クリスマスもハヌカーも時期は同じだから、わかりにくいよね」と優しくフォローしてくれました。そして、ユダヤ教の家ではハヌカーは8日間祝うこと、ろうそくを9本灯せるようになっている燭台に、毎日、1本ずつ火を灯し、最終日には9本すべてのろうそくに火が灯ることなどを教えてくれました。