異なる視座から「共創」を生み出すために

「モノづくりのまち・東大阪」は生き残れるか、デザイナー集団のチャレンジとはMAKI HIRAKAWA
大手家電総合メーカーの家電・照明器具のデザイナーを経て2001年 ヒラカワデザインスタジオを設立。以後、デジタル家電・医療機器・玩具・照明器具等、多くの企業のデザイン開発に携わる。プロダクトの外観デザインの他、事業企画・商品企画・設計支援・デザイン監理・ブランド開発など、総合的な製品開発デザインを行っている。行政機関のデザインプロデュースやマネジメント、デザインセミナーの企画運営など、製品デザインの専門を軸に、企業や社会における「デザインによる新価値創造」を目指し活動の場を拡げている。

 最後に、私がプロジェクトディレクターとしての経験を通じて得た学びも共有したい。このプロジェクトでは、行政、企業、デザイナーという立場の異なる人や組織をつなぐ結節点になりつつ、クリエイティブチームと共に、仕組み全体をデザインする役割を担った。この中で強く意識したことは二つある。「視座の違いをポジティブに生かすこと(共創)」と「チームの心を合わせること(共有)」だ。

 前者については、デザイナーなどのクリエイティブ職が持つ多様なスキルや、企業各社の独自性を最大限生かす設計にしてきたことは前述の通りだ。加えて、行政とデザイナーが企画段階から共創できたことの意味も大きい。このプロジェクトは「1期2年」のサイクルを継続的に回す持続型のスキームとなっている。これは、製品開発のプロフェッショナルであるデザイナーと、行政のプロフェッショナルである市の担当者が共に策定したからこそ実現したものだ。自治体の事業は単年度決算であるが故に1年で完結しなければならないことが多い。しかし、中小企業が既存事業を走らせながら、わずか1年で新規事業を創出するのは難しい。初期からデザイナーが参画したことで、長期的に成果を生み出せるプロジェクトになったと考えている。

 後者については、プロジェクトの推進プロセスに、参加企業の工場見学やデザインの中間プレゼンテーションなど、プロジェクト関係者が一堂に会する機会を情報共有や学びの場として設定してきた。ビジネス面の成功だけでなく、プロジェクトの参画体験そのものの価値を高める視点も、共創型プロジェクトのデザインには不可欠な部分だと考えている。

 私自身、プロダクトデザイナーとしての経験と知見を生かしつつ、プロジェクトをディレクションしたことは貴重な経験となった。デザインの役割が広がる中、デザイナーには、異分野間のコミュニケーションを媒介する力が強く求められるようになった。また、デザインの専門分野が細分化したこと、これまでデザインが活用されてこなかった領域でのデザインへの期待が高まる時代だからこそ、狭義のデザインにおいては軸足となる専門性の重要度がより高まっていると感じる。

 現在、このプロジェクトは2期目に入り、企業×デザイナーのタッグが8組になった。業種を超えた対話から生まれるビジョンや企業間連携なども、未来の展望として期待が持てる。こうした相乗効果が広がれば、地域の求心力が増し多くの企業や人材を引き付け、東大阪市全体のブランド力がさらに向上するだろう。

 企業とデザイナーの良い協業には相互理解を深めるための時間とプロセスが必要である。しかし、その苦労を乗り越えて「自社を深く理解したデザイナー」という存在を得ることができれば、長期的な強みになることは間違いない。このプロジェクトで培われた信頼関係が、これからも息の長い伴走関係として続くことを心から願っている。

公益財団法人日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)
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