幸い、企業側がこちらからの申し入れを受け入れたため、Aさんは無事に退職することができた。

 なお、即時解雇してくる会社に対しては、解雇予告手当(従業員に対して解雇日の30日以上前に、解雇予告せずに解雇を行う場合、支払いが義務付けられている手当のこと)を請求することもある。もっとも、そもそも解雇の有効性が疑問視される事案も多いため、このようなケースはそう多くはない。また、未払い給与については警告書を送るなどの対応も行っている。

 こうしたことを行うには法律的な知識が必要であり、退職希望者が自分だけで対応するのは難しい。

退職代行サービスが
急増している理由

 2010年代後半以降、「退職代行サービス」を行う事業者が増加している。

「退職代行サービス」とは、一言で言うと、労働者本人ではなく第三者がその労働者の代わりに職場に退職の意思を伝えるサービスである。

 2017~18年頃よりメディア等で取り上げられることが多くなり、2022年現在では100社以上の退職代行業者が存在すると思われる。

 なぜ退職代行サービスのニーズが増加しているのか。

 その理由の一つは、昨今の人材不足にある。

 例えば、職場を辞めようとすると「次の人が見つかるまで働いてほしい」「あなたに辞められたら職場が回らなくなる」等と圧力をかけられたり、部下の退職が上司の直接の評価に響く・部署に最低人数枠が決められているためその確保という会社側の都合により引き留められる、などといった問題が見受けられる。

 他にも、パワハラなどにより職場に退職の意思を伝えることが困難、離職票など必要書類を用意してくれないなどといった理由で退職したくても言い出せない、というケースも存在する。

 本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。

 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっていると思われる。