石油元売り業界トップの新日本石油と同6位で銅などの金属事業も手がける新日鉱ホールディングスは4日、来年10月をメドに経営統合すると発表した。両社の売上高は単純合算で11兆8600億円となり、ガソリン販売シェアは合計33%と国内では断トツのシェアを持つ企業が誕生する。

 日本の石油元売り業界は、国内のガソリン需要減退や石油化学事業の採算悪化などかげりが見え始めていたことから、新たな成長戦略を求められていただけに、今回の経営統合が他の石油元売り会社の再編を促すのは必至だろう。

 「両社の関係が密になっているのはうわさになっていたが、思っていたよりも内容が濃く、速い動きだ」。大手石油元売り会社の中堅幹部は今回の経営統合に唖然とした表情で語る。それだけ石油元売り業界に与えるインパクトは大きい。

 経営統合は、共同で持ち株会社を設立し、その傘下に石油精製・販売、油田開発、金属などの事業会社を配置する。これで既存事業の経営効率をアップできるほか、燃料電池や太陽光発電など新事業への投資も加速することが可能になる。

 じつは、両社は2006年6月に包括的な業務提携を締結していた。探鉱・開発、石油精製事業、相互物流など既存分野だけでなく、燃料電池といった将来の事業の柱と考えている分野についても協力して市場開拓を進めることで合意。両社の関係はこうした業務提携を通じて深化していったようだ。

 背景には石油元売り業界が転換点を迎えていたことがある。赤字が常態化している石油精製・販売事業については、国内のガソリン販売量が3年連続でマイナスを記録。日本の経済成長が頭打ちとなり、自動車の小型化や低燃費自動車の導入が進むなかで将来需要が減少していくのは明らかだ。

 さらに近年は、石油精製事業のなかで健闘していた石油化学部門も採算が悪化していた。その原因は天然ガス由来の化学製品が石油化学部門を脅かし始めたことにある。天然ガスは原油よりも価格が安く競争力があるため、石油化学部門は中期的には収益の悪化は避けられない状態にあった。

 両社の経営統合で予想されるのが、ライバル他社の合従連衡(がっしょうれんこう)だ。特にシェア2位のエクソンモービルについては、世界でも収益性が低い日本部門の売却や撤退が常にうわさされている。

 11月以降は明らかに他社よりも高い卸売価格となっているためガソリンスタンドからの不満もくすぶっている。同社自身も記者会見の際には、「常に資産の売却については検討課題の一つとして意識している」と明言していただけに、注目される。

 他の石油元売りにしても超巨大石油元売りの誕生で相対的な地位低下が予想されるため、さらなる経営統合が進む可能性は高そうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也 )