日本銀行の黒田東彦総裁の提案に対し、是々非々で票を投じた審議委員の一人が白井さゆり氏だ。特集『総予測2023』の本稿では、白井氏による黒田日銀10年の総括と、新体制に求める政策を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
経済回復に功績残した黒田総裁
マイナス金利導入以降に課題
――黒田東彦氏の日本銀行総裁就任から2023年で10年です。
黒田総裁の10年を振り返ると、思い切ってやれることを全部やったことは良かったと思います。
12年11月の衆議院解散で、当時野党・自民党総裁の安倍晋三氏が大胆な金融緩和をするとの見立てから、先に海外のヘッジファンドが動きました。それまでは超円高で下請け企業に対するデフレ圧力がすさまじかったですが、円安になり、超株安も緩和されました。
日銀は13年4月にQQE(量的・質的金融緩和)を導入し、14年10月に緩和を拡大しました。同年の後半はインフレ期待が下がり始めていたので、私はちゅうちょなく賛成しました。
やれるだけ全部やらなかったら、日銀はずっと中途半端だったはずです。経済状況も12年よりずっと良くなりました。少なくともコロナ前までは。
――黒田日銀が残した課題は。
私が黒田総裁をサポートしたのは、マイナス金利政策の前までです。同政策の導入以降、政策の枠組みが分かりにくくなっています。
次ページでは、白井氏が指摘する日銀の課題と、新体制に求める政策を直撃。2%物価目標をいかに変えるべきか明らかにする。