総予測2023#22Photo:Santiago Urquijo/gettyimages

ウクライナ紛争の影響による、資源価格や食料品価格の高騰に悩む欧州経済。マイナス成長に転落する公算は大きく、今後は各国の財政出動などにより、深刻な景気後退を回避できるかが焦点となる。特集『総予測2023』の本稿では、23年のユーロ圏と英国の成長見通しについて、第一生命経済研究所の田中理氏に予測してもらった。

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

ウクライナ紛争で資源価格が高騰
欧州各国は歴史的な高インフレに

 新型コロナウイルスの経済的な打撃からの回復途上にあった2022年の欧州経済を襲ったのが、ロシアによるウクライナ侵攻の余波だった。

 欧州連合(EU)による対ロシア制裁の報復措置の一環で、ロシアは欧州向けの天然ガス供給を絞っている。ロシアからのパイプラインにガス供給の多くを依存してきた欧州は、エネルギー供給が不足し、深刻な景気後退に陥ることが不安視されてきた。

田中理・第一生命経済研究所主席エコノミストたなか・おさむ/1997年慶應義塾大学法学部卒業。同年日本総合研究所入社。海外大学院などを経て2009年第一生命経済研究所、12年より現職。

 冬場の需要期に備え、欧州各国は代替エネルギー源の確保やガス貯蔵の積み増しを急ぐとともに、省エネの取り組みを加速。暖冬にも助けられ、今冬のエネルギー危機はどうにか回避されそうだ。

 だが、世界的なガス需給の逼迫は代替エネルギー源である液化天然ガス(LNG)の価格高騰を招き、欧州各国は歴史的な高インフレに見舞われている。資源価格の高騰は食料品を中心に他の財・サービス価格にも波及し、長らく低迷が続いてきた賃金にも上昇圧力が及んでいる。

欧州各国のインフレ封じ込め政策は成功するのか。次ページではユーロ圏、英国の23年の具体的な成長率予想を発表。深刻な景気後退を避けられるのかを徹底分析します。