コンビニコーヒーが定着するなど、日本でコーヒーを飲む姿は日常の光景となりつつある。日本の1人当たりのコーヒー平均消費量は1日約1杯。ただ、日本にコーヒー文化が根付いたのは、世界的には遅かったのだという。日本でコーヒーが愛されようになった理由を、『珈琲の世界史』の著者・旦部幸博氏に聞いた。(清談社 小森重秀)
江戸時代の文人が
書き残した「コーヒーの味」
今、この記事を読んでいる人の手にはコーヒーカップが握られているかもしれない。休憩中にコーヒーで一息つく人もいれば、覚醒効果のあるコーヒーを仕事のお供にしているという人も多いはずだ。
世界中で親しまれているコーヒーだが、日本ではヨーロッパやアメリカとは違う独自の発展を遂げてきたのだという。
そもそもコーヒーは、どのような形で日本に根付いてきたのか。『珈琲の世界史』の著者である旦部幸博氏によると、江戸時代、長崎の出島へ商談に訪れたオランダ人が振る舞ったコーヒーが、日本人とコーヒーとの初めての出会いだったと考えられているのだそうだ。
「1804年に文人の大田南畝(蜀山人)が『瓊浦又綴(けいほゆうてつ)』という随筆に『焦げくさくして味ふるに堪へず』とつづっていますが、当時のコーヒーの味に関する記述はこれ以外にほとんど残されていないんです。『白糖を和したるものなり』とも書かれており、コーヒーに砂糖を入れて飲んでいた可能性は高く、飲みにくくはなかったとは思いますが、他に似たような味がない飲み物ですからね。異国の飲料という物珍しさも手伝って、衝撃を受けたのではないかと思いますよ」
コーヒーの輸入が本格的に行われるようになったのは、1854年の開国後。次々と欧化していく日本において、コーヒーも徐々に認知されていく。19世紀末に流行したオッペケペー節の歌詞にもコーヒーが登場していたそうだ。