200兆円に達する、われわれの年金資産を運用する年金積立金管理運用独立法人(GPIF)。GPIFの運用は、市場を通して企業経営や世界の在り方にも大きなインパクトを与える。3回にわたって宮園雅敬理事長の考えを聞いてきたが、最終回となる今回(3)は、GPIFが、これからどこへ向かおうとしているのか聞いた。(名古屋外国語大学教授 小野展克)
200兆円の巨額かつ50年以上のスパンを考える投資の意味
200兆円の資金を運用する世界最大の機関投資家・GPIFのかじ取りをする上で、宮園が心がけていることは何なのだろうか。
「少し文学的な表現になるかもしれませんが、50年というスパンを考えて投資をしている機関投資家は、世界的に見ても、そう多くはありません。見えてくる風景も、まったく違ってくるのです」
GPIFは運用のスパンが非常に長い。ヘッジファンドなどの投資家が短期的な利益を目指すのに対して、公的年金財政の運用を任されているGPIFは50年という長いスパンを視野に入れる必要がある。
GPIFの運用成果は日々の年金の支給に回るわけではなく、現在は蓄積されている。現在の運用成果が、国民の年金支給に充てられキャッシュアウトが始まるのは50年後、60年後だ。
「例えば気候変動の問題も50年というスパンで見ると、『2050年のカーボンニュートラル』という目標も、ちょうど真ん中あたりにあるにすぎません。つまり投資家としての過去の成功体験は重要かもしれませんが、50年もすれば、それは通用しません。違う風景を見る習慣を持つことが投資を考えていく上で重要になります」
50年後を見据えたときに、テーマになることは何なのだろうか。