中国への直接投資と株式投資それぞれの展開

 今後、海外企業の対中投資は不安定に推移するだろう。工場建設などの直接投資に関しては、中国から他の国や地域へのシフトが増えることは間違いない。ただし、共産党政権は「中国製造2025」を推進するために、海外企業と中国企業の合弁事業をより重視し、「技術の強制移転」のリスクが高まるのではとの見方も増えている。加えて、ゼロコロナ政策による個人消費の停滞、不動産市況の悪化などによって、販売面でも海外企業への逆風は強まるだろう。

 また、中国企業にとっても事業運営コストの引き下げは大きな課題になっている。ユニクロなどの生産拠点の移管に伴って、中国の縫製大手である晶苑国際集団(クリスタル・インタナショナル)は、ベトナムなどでの生産能力強化に取り組んでいる。企業戦略としては、デジタル技術などを用いて中国の個人消費を取り込みつつ、いかに生産コストを引き下げるかが問われている。

 一方、株式投資の観点で考えると、直接投資とは異なった展開が予想される。台湾問題の緊迫化や個人消費のさらなる減少懸念が高まった場合には、リスク回避の動きが鮮明化し、中国本土株や香港株は下落するだろう。その場合、海外投資家は短期目線で押し目の買いを入れやすい。ポートフォリオ投資は周期的に減少と増加を繰り返す展開が予想される。

 いずれにしても、共産党政権の経済・社会政策がどう運営されるかが命運を握る。現時点では、共産党政権は情報統制のためにIT先端企業への締め付けを一段と強める公算が大きい。また、台湾に対する圧力への懸念は増すばかりだ。今後、中国への直接投資は徐々に減少していくと考えられる。世界経済を下支えするというよりも、下振れ要因として、中国経済の存在感はこれまで以上に無視できなくなっている。