変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋している本連載の書下ろし特別編をお届けする。

「どんな困難にも臆せず立ち向かう人」と「困難に直面するとすぐに心が折れてしまう人」の決定的な違いとは?Photo: Adobe Stock

現代は常にゴールが不明確

 現代はVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代と言われ、私たちの周りでは日々劇的な変化が起きています。ここ数年間はコロナ禍の影響もあり、リモートワークの普及が一気に進んだり、消費者の購買行動が一変したりしました。

 私自身もコロナ前はほぼ毎週のように何時間もかけて東南アジア諸国に出張をしていました。しかし、コロナ禍をきっかけに多くの会議をオンラインで実施するようになったため、他国との距離が一気に縮まったように感じています。

 コロナ禍以外にも、ここ10数年でリーマンショック、東日本大震災、ロシアによるウクライナ侵攻などの出来事が起きています。それ以外にも、技術革新によって私たちの生活は変わり続けています。

 このような変化の激しい時代においては、ゴールを一つに定めることは難しく、常にゴールを探し続けることが求められます

一つのオプションしか持っていないと
すぐに壁にぶつかってしまう

「石の上にも三年」ということわざがありますが、かつては一つのことを長きにわたって続けることが美徳のように扱われていました。幼少期から熱心に勉強し、有名な学校に進学し、名の通った大企業に入社したり弁護士になったりすれば、一生安泰とも考えられていました。

 しかし、変化の激しい今の時代、その大企業がある日倒産してしまうかもしれません。あるいは人工知能によって、弁護士の仕事の多くが消失してしまうかもしれません。この先どのような産業や職種が消失し、どのような産業や職種が新たに生まれるかは誰にも予想できません。

 産業が消失するほどの大きな変化でなくても、10年間継続していたITサービスを提供するプロジェクトを、ベトナムの低価格のIT企業に奪われてしまうかもしれません。すべての業務がフリーランサーに外注され、自部門が突然なくなってしまうかもしれません。

 このような、予測不可能な変化により常にゴールを探し求めねばならない時代に一番危険なのは、一つのオプションしか持っていないことです。一つのオプションしか持っていないと、一つの道が閉ざされてしまったときに行き場がなくなり、立ち往生してしまいます

複数のオプションを持つことで、困難に立ち向かえる

 困難に直面した際に臆せずに立ち向かえる人は、常に複数のオプションを持っています

 例えば、大企業に勤めていても安住せず、他企業でも働けるようにスキルを磨く努力を怠らなければ、ある日会社が倒産しても次の仕事を見つけやすくなります。弁護士であっても会計の知識があったり、SNSを通した発信力があったりすれば、人工知能によって代替されにくくなります。

アジャイル仕事術』では、自分オリジナルの教科書をつくる具体的な方法以外にも、働き方をバージョンアップするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。