消費者への誠実な告知が
企業の印象を左右する

 では、ステルスではない実質値上げはどうだろうか。ここでいう実質値上げとは、冒頭の通り、消費者に告知をした上で、内容量を減らして価格を据え置く措置のことだ。

 例えば、明治は商品の実質値上げを行う際、ホームページ上で「内容量変更のお知らせ」として告知している。9月からは「明治バター50%贅沢ブレンド」が、10月からは「明治北海道十勝細切りチーズ」が、いずれも内容量を10g減らしたが、価格は据え置きとなっている。

 ロッテでは、「ガーナ」や「クランキー」といった袋菓子で9月以降に内容量を減らして出荷しているが、こちらもプレスリリースを配信。両社とも、原材料費や物流費、包装材などコストの上昇を理由とし、消費者に理解を促している。

 もちろん、告知があったからといって、消費者にとって実質値上げそのものは喜ばしいニュースではない。またその告知が消費者の目に入るかというと、必ずしもそうではないだろう。

 ただ、何らかの説明が事前にあったのかによって、受け手が「残念だけどそうだったのか」と感じるか、あるいは「裏切られた」と不信感を抱くか、印象は大きく異なる。メーカーの努力も垣間見える丁寧な文章から誠意が伝われば、実質値上げもやむなしといった理解を得られる可能性は大いにあるだろう。

 また、最近では消費者のステルス値上げに対する反発感情を逆手に取って、「脱ステルス値上げ」を自社のブランディングに生かそうとする動きも出てきている。例えば、消火剤の製造販売を手掛けるファイテックは、商品値上げの発表に際し、下記のコメントを出している。

ファイテックの消火用具は、万が一の火災の時に命や財産を守るための商品であることから、原材料のグレードや品質を下げた場合、著しい消火能力低下や機能性低下が発生するため、消費者に見えない形で品質を犠牲にするという「実質的値上げ(ステルス値上げ)」はいたしません。私たちファイテックは、これからも「お客様第一主義」を貫き、お客様の信頼を裏切りません。
(注:このコメントは「実質値上げ」と「ステルス値上げ」を同じものとして説明しているが、原文ママとした)

 消費者にとって、容量や品質の低下というデメリットをもたらし、企業にとっても炎上リスクの高い「ステルス値上げ」は、まさに百害あって一利なし。実質値上げを検討するのであれば、せめて消費者への誠実な告知を行うことを強くおすすめしたい。

ブランドロイヤルティーを高める
新しい値上げ手法とは?

 メーカーが安易にステルス値上げを選んではいけない理由はまだある。値上げ幅の問題だ。これまでと同じ価格にもかかわらず、内容量が極端に少なくなるとなれば顧客の心は急速に離れていく。顧客が内容量の変化に気づくケースも増え、「ステルス」にはなり得ない。

 つまり、ステルス値上げでは値上げの幅(内容量の減少)を小さくせざるを得ず、その場しのぎの応急処置にしかならない。抜本的な改善にはつながらないのだ(これは実質値上げでも共通するが)。

 だからといってコストが上がる度に小刻みな値上げを何度も繰り返すと、消費者の不信感は雪だるま式に増幅するだろう。円安やコスト高に終わりが見えない中で、安易に実質値上げ・ステルス値上げに走るのは、リスクが大きいといえる。

 そこで筆者がおすすめするのは、「量当たり単価を上げる」という新しい値上げのアプローチだ。日本コカ・コーラの事例を基に解説する。