仮にそのようなことがあれば、大いに安心でポジティブなサプライズだ。本記事の続きは読む必要がない。読者は「予想を外したバカ!」と笑ってくれていいし、筆者も自身のバカぶりを笑って喜ぶことにする。その日の株価は、1日で日経平均株価でいうと1000円以上上がるのではないだろうか。

 国民や投資家が注目すべきポイントは、新体制が金融緩和の見直しを「どのくらいのスピードで行うか」を探ることだろう。

 なお、金融緩和政策の見直しが常にダメだと言っているわけでないことには注意してほしい。黒田総裁が言及するような、賃金の上昇を伴う経済の好循環を背景とした物価上昇が定着して、インフレ目標である「インフレ率2%」を安定的に達成できるような状況で金融緩和の縮小に転じることは適切だ。そして、そのためにこそインフレ目標がある。

 避けたい状況は、望ましい物価上昇が実現する手前や、実現して早過ぎるタイミングで金融引き締めに転じて、日本に再びデフレ癖・低インフレ癖を呼び戻すことだ。

 黒田総裁以前のような日銀であれば、また、円安悪玉論を隠さない現在の鈴木俊一財務大臣に振り付けをしているような現在の財務省の意を受けた日銀の新体制であれば、「早過ぎる引き締め」のリスクは小さくない。

 注目点は政策変化の「スピード」の一点にある。

変化スピードを占う上で
注目は「学者枠」の副総裁

 現在噂の俎上に上っているような凡庸な人物が総裁になり、副総裁の一方は、「総裁の意に従う組織人」である日銀出身者か財務省出身者だろう。ここには、大きな期待を持てないだろうし、2人の人選だけから今後の政策を示唆する情報を読み取ることは難しいのではないか。

 金融政策変更のスピードを推測する手掛かりは、おそらくは学者ないし識者から選ばれるもう一人の副総裁の人選にあるのではないか。現在の若田部副総裁のポジションの実質的な後任者だ。

 ありそうにない人事だと現時点では推測するが、仮にこのポジションにリフレ派の学者を任命した場合、岸田首相は金融緩和政策の連続性の維持を強く意識していることが分かる。その場合、政策変更のスピードはかなりゆっくりとした慎重なものになるだろう。このようなバランス感覚が働くのであれば、岸田首相を少々見直してもいい。