日銀の黒田東彦総裁は、2023年4月に任期満了を迎える。「日銀レース」を制し、黒田体制のバトンを受け取るのは誰か。特集『総予測2023』の本稿では、政府、財務省、日銀関係者への取材を基に、正副総裁人事の勝者を独自に予想した。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
「超官邸主導」路線は修正か
日銀人事は“伝統”路線に回帰へ
円安やインフレ対策が日本経済の最優先課題に浮上する中、これらの命運をも左右する「最重要イベント」が2023年春に待ち受ける。“通貨の番人”として絶大な影響力を誇る、日本銀行の正副総裁人事だ。
振り返れば10年前、アベノミクスの目玉として、大規模な金融政策を重視する「リフレ派」の黒田東彦氏や岩田規久男氏らが官邸主導で正副総裁に送り込まれた。これは歴史的に見れば、極めて異例の選出プロセスだ。
日銀の正副総裁人事には、長らく独特の“伝統”が息づいてきた。それは、原則として「日銀」「財務省」「学者」という三つの枠の出身者から、前任者との連続性を考慮して決められてきたことにある。黒田執行部は連続性を考慮せず、とにもかくにもリフレ政策を推進する人選だった点が異例だった。
そして、23年の選出は、官邸主導の色合いが極めて強かった安倍政権と比べ、再び伝統的な金融政策を重視する従来型の考え方に近くなる公算が大きい。
なぜなら、決定権を持つのは岸田文雄首相。安倍晋三・菅義偉元首相に比べ財務省・日銀寄りの考えを持つだけに、正副総裁とも、過去10年執行部を席巻してきたリフレ派を送り込むシナリオは“消失”したといえる。
では、次期正副総裁レースは誰が制するのか。次ページで有力候補者の序列を公開し、23年の新体制下の金融政策を予測する。