他方、金融政策の変更を急ぐのであれば、かなり強硬な反リフレ派的な意見を持つ学者を指名するのではなかろうか。

 新体制の政策委員会には、野口旭審議委員と、安達誠司審議委員という2人のリフレ派論客が残る。彼らに対抗する意見で学問的なやりとりができる副総裁を選ばないと、金融緩和撤収を決めようとする際の議事が議論の体をなさなくなるリスクが生じる。

 総裁の意向で「長い物には巻かれてくれ」式の結論のまとめ方は組織運営論としてあるとしても、強力な反論を併記の形で議事録に残して、後に政策の失敗を認めなければならなくなるような事態は日銀も新総裁も避けたいだろう。

 学者の副総裁であれば、過去に書いた文章や発言から意見の方向性を探ることができる。2013年の黒田総裁の就任以来、「異次元の金融政策」を巡って各所で論争や検討会が行われたので、検討材料は豊富にあるはずだ。

 新体制の人事発表の際には、「学者枠」の副総裁に注目したい。

正副総裁人事が発表されたら
記者会見で何が分かるか

 新しい総裁と副総裁が発表されたら、彼らが発するコメントが注目されることになる。特にマーケット関係者は、今後の政策を探る手掛かりがないかを熱心に探ることになるだろう。

 指名を受けてのコメントは、よほどのことがない限り、現在の政策の連続的継承を強調する無難なものになるはずだ。

 首相官邸も日銀も、もちろん新総裁も、「○○ショック」と呼ばれるような株価急落を招くような事態をぜひとも避けたいはずだし、そのための発言のシナリオや振り付けを慎重に考えるはずだ。

 ただし、総裁も副総裁も子どもの使いではないし、自意識やプライドのある生身の人間なので、今後の政策変更を示唆するような発言が出る可能性はある。

「政府と日銀とのアコード(政策協定)の見直しはあるか?」「2%のインフレ目標の達成時期についてどう考えるか?」「現在の日銀のオーバーシュート・コミットメント(インフレ率2%を十分超えるまで金融緩和を継続するというコミットメントでありフォワードガイダンス)を見直す考えはあるか?」

 そういった質問に対して、政策変更のフリーハンドを確保したいとの意向をうかがわせるような発言があれば、「政策変更のスピードは案外速いかもしれない」と推測していいだろう。

 新総裁・副総裁たちがどのくらい無難なコメントができるのか、そのコメントは本当に無難なのかを、興味深く聞いてみたい。