総予測2022#82

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が始まってから3年。2022年末のカタール・サッカーワールドカップでマスクをしている観客はほとんどおらず、以前のように4年に1度の祭典を謳歌する光景は、いまだユニバーサルマスクが当たり前の日本の異様さを浮き彫りにした。特集『総予測2023』の本稿では、日本のコロナ禍が終わらない理由の本質について、感染対策と経済活動の両立についての分析・発信をしてきた東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授が解説する。(聞き手/ダイヤモンド編集部 野村聖子)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

ワクチンや治療薬に
コロナ禍の出口を期待するフェーズではない

 2020年末から、新型コロナウイルス感染対策と経済活動の両立についてさまざまな分析・発信を行ってきました。

 分析にコロナ感染症の致死率や重症化率を下げるワクチン接種、治療薬の登場が大きな影響を与えてきたのは間違いありません。しかし、現時点で「コロナ禍の出口戦略に必要なものは何か」と問われれば、「もはやワクチン接種、治療薬に“ゲームチェンジャー”を期待するフェーズではない」とお答えします。

治療薬やワクチンがだめなら、コロナ禍を終わらせるゲームチェンジャーとは何か。仲田准教授は「コロナ死者数を1人減少させるためにどの程度の経済的犠牲を払いたいか」という、いわば「命の価値」の試算は各国で大きな差があり、それがコロナ禍の出口戦略に影響を及ぼしている可能性があると指摘する。