人々が「住みたい区」
「子どもを産みたい区」の1位は…?
ここまでは「保育園の入りやすさ・入りにくさ」を中心に解説してきたが、それだけを基準に居住地を選ぶ人は少ないだろう。住みやすさや治安の良さ、職場へのアクセス、教育環境といった要素も重要だからだ。
そのため、ここからは東京23区の中で、人々が「この街に住みたい」「この街で子どもを産みたい」と考える魅力的な区を探っていきたい。
着目する指標についてだが、人々が「この街に住みたい」と思うエリアは人口増加率が高くなり、「子どもを産みたい」と思うエリアは合計特殊出生率が高くなるはずだ。
まずは人口増加率について見ていくと、2014年~22年の伸び率が高い「住みたい区」の1位は中央区(14年比で29.3%増)。2位は千代田区(同23.8%増)、3位は文京区(同10.8%増)だった。
4位は品川区(同9.5%増)、5位は港区(同9.3%増)なので、都心寄りに人が集まっていることが分かる。一方、23区で最も不人気だったのは江戸川区(同2.0%増)。次いで不人気だったのは足立区(同2.8%増)、その次は葛飾区(同3.1%増)だった(注:住民基本台帳における東京都の「区市町村別男女別人口」をもとに算出した)。
次に、合計特殊出生率の高い「子どもを産みたい区」を見てみよう。2014年~2021年の出生率の平均値は、1位が中央区(1.41)、2位が港区(1.38)、3位が江戸川区(1.35)という結果だった。
4位は江東区(1.31)、5位は千代田区と葛飾区(いずれも1.30)、7位は足立区と荒川区(いずれも1.27)。人口増加率では下位だった東部エリアの区が上位に食い込んできた。
なお、ワースト3は豊島区(0.98)、中野区(1.00)、杉並区・新宿駅(ともに1.01)だった。豊島区は23区内で唯一、合計特殊出生率が1を割り込んでいた(注:東京都福祉保健局が公表している、区市町村別の合計特殊出生率のデータを参照した)。
これらの結果と、冒頭で述べた「保育園への入りやすさ」のデータを組み合わせ、「住みたい」「子どもを産みたい」「保育園に入りやすい」の3要素をバランス良く満たす区を順位付けすると、以下のような形になった(注:各区の(1)「2014年~2022年の人口増加率」、(2)「2014年~2021年の合計特殊出生率の平均」、(3)「2022年の保育園の入園倍率」を対象に、東京23区の平均値に対する割合を算出。その割合の平均値を区ごとに算出し、ランキング化した)。
1位 千代田区
2位 中央区
3位 港区
4位 葛飾区
5位 文京区
6位 品川区
7位 北区
8位 墨田区
9位 板橋区
10位 新宿区
11位 目黒区
12位 豊島区
13位 江東区
14位 荒川区
15位 渋谷区
16位 足立区
17位 練馬区
18位 杉並区
19位 中野区
20位 世田谷区
21位 台東区
22位 大田区
23位 江戸川区
都心部の3区がトップ3を占めた一方、高級住宅街のイメージがある世田谷区はワースト4位に沈んだ。世田谷区は、成城学園前駅が「認可保育園に入りにくい駅」の12位(倍率5.37倍)に入るなど、必ずしも子どもを保育園に入れやすいわけではないのだ。
なお、スタイルアクトが運営するマンション情報サイト「住まいサーフィン」では、「認可保育園に入りにくい駅ランキング」について、調査を行った23区内400駅の全データを会員限定で無料公開している。興味のある方は参考にしていただきたい。