新年を迎えて、はや半月が過ぎた。コロナ感染者数が積極的に報じられなくなって以降、コロナは終わりつつあるという意識が広がりつつあるように思える。だが足元では「第8波」が到来し、国内感染者数は20万人を超える日が続き、死者数は過去最多を更新し続けている。そんな中、3年ぶりに迎えた行動制限のない年末年始を、鉄道事業者はどのように迎えたのだろうか。各社の発表などを元に振り返ってみたい。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
68年ぶりになくなった
2020年末の終夜運転
まずは年末の恒例行事、終夜運転だ。コロナ前、最後となる2019年末の終夜運転は壮観だった。JR東日本は山手線、京浜東北線、中央線など首都圏主要路線のほとんどで12~60分間隔で実施。また都心のネットワークを構成する東京メトロ、都営地下鉄も各路線でおおむね30分間隔の運転を行った。
関東の大手私鉄も、西武鉄道(終電後臨時列車を設定)を除く全社が終夜運転を実施した。沿線に成田山新勝寺を擁する京成電鉄、川崎大師の京急電鉄、浅草寺・西新井大師の東武鉄道、大國魂神社・高尾山薬王院有喜寺と高尾山山頂の初日の出が人気の京王電鉄が初詣客を輸送。また東急や小田急は明治神宮や日枝神社、東京大神宮など都心方面の参詣客を送り込んだ。
ところがコロナ禍により、翌2020年末は全社が終夜運転を見送った。大みそかの終夜運転は昭和初期から徐々に定着し、1937年には関東のほぼ全ての私鉄で実施されている。しかし太平洋戦争の勃発により1941年末から終夜運転は中止され、再開されたのは敗戦を挟んでサンフランシスコ講和条約が発効した1952年末のことだった。つまり、2020年末は68年ぶりに終夜運転のない大みそかだったことになる。
しかし翌年、2021年は思いのほか早く終夜運転が復活した。ちょうど感染第6波の到来が明らかになりつつあった時期だったが、JR東日本は2019年末比で運行本数こそ大きく削減したが、常磐線、京葉線を除き終夜運転を再開した。
ただ、JR東日本以外は腰が重かった。終夜運転は東京メトロが銀座線浅草~上野駅間、都営地下鉄が浅草線押上~浅草橋間のみで、私鉄では京成と京王だけが実施した。