予想が外れる理由

 最初に誤解のないように言っておくが、筆者はこうした予想をした人たちを揶揄(やゆ)するつもりは全くない。彼らはいずれも、日本を代表する優秀な経営者である。ただ、「予想の確かさ」というのは個人の資質とか優秀さとはあまり関係がないのである。特に市場というものは「不確実性」に支配されるという性格を持っているので、完璧に予想を当てる、あるいは当て続けるなどということはどんなに優秀な人でもできるわけはないのだ。

 これに加えて、人間の持つ心理的な傾向がこうした予測を大きく外してしまう方向に作用する。これは経営者に限らず、マーケット予想をするストラテジストやアナリストにも同じことが言える。どうも予測には、一定の法則があるようだ。

 一つ目は、多くの予想が現時点での数値を元にしていること、そしてもう一つの法則は、現時点でのトレンドや方向に沿った予測になっているということだ。これは「外挿バイアス」という心理現象で、将来予測をするにあたって、現在までのトレンドに過度に依存することを言う。

 実際、多くの予想は上にも下にも現時点の数値からは大きく離れたものではないことが多い。そして現在が上昇トレンドであれば、ここからの上値の幅は下値の幅よりも少し広くなっているし、逆に下降トレンドであるなら、上値よりも下値の幅の方が少し広くなるという傾向があるのだ。