しかしながら、専門家というのは本来、市場の流れを分析し、投資家が自分で判断するために役に立つ情報を提供するのが役割だ。したがって本当は日経平均の予想やどの株が上がるかなどということはあまり予想したくないのが本音だろう。でも、新聞や雑誌などのメディアから要請されるため、仕方なくやっているのだろう。

当たらないのになぜ「株価予想」企画は続くのか

 ではなぜ、メディアは専門家に対してそんな予想をすることを求めるのかというと、答えはたった一つ、「投資家が求めているから」である。それも自分で考えるのが面倒くさい、だれかよく当たる人のご託宣を聞きたいという心理になっている投資家が多いからだ。

 人間は誰しも先の見えないものに対して不安を感じるのは当然だ。でも、本来はその不安に向き合う覚悟と勇気がないと投資はやるべきではない。ところが「何を買えばもうかるか?」「簡単に投資したい」という安易な気持ちで投資をする人が一定の割合でいるから、「予想」が好まれることになるのだろう。

 さらに言えば予想をする専門家だけではなく、投資家も専門家と同じような心理的なわなに陥っている可能性はある。前述した「外挿バイアス」は、投資家にもあるということだ。実際、専門家の中には普通と違ってかなり大胆な予測を出す人も一部はいるが、多くの投資家はそういう大胆な予測にはあまり共感せず、大多数の無難な予測をより重視する傾向が見て取れる。