前回までに国際基準制定主体が基準制定に合意するまでの流れについて述べたが、国際基準制定主体がどのように統治されているかについては、あまり知られていない。もっと言えば、国際規準制定主体で、その意思決定機関と執行機関(事務局)がどのような関係かまで知っているのは、ごく一部の関係者だけであろう。しかし、これは国際基準制定主体の動向を知る上では欠かせない重要なポイントである。今回は私の経験をもとに国際基準制定主体の統治についてひもといてみたい。
意思決定機関と事務局の関係
国際基準制定主体の統治は、加盟国を代表して選ばれた国のメンバーで構成される意思決定機関と、事務局が担っている。意思決定機関が重要な政策や組織運営上の重要事項(主要な人事、組織体制、予算等)を決め、各加盟国が政策を実行し、事務局は加盟国のサポートと組織の運営に関する執行責任を負う。意思決定機関の会合は数カ月に一度開かれ、ここで政策面の議論や事務局の業務進捗状況の確認のほか、組織運営上の重要事項について議論し、決定する。
意思決定機関の議長と執行責任者(事務局長)が緊密に連携を取ることで、組織の円滑な運営が確保される。言い換えれば、意思決定機関の議長と事務局長の関係が、その組織の方向性や活動に多大な影響を与える。
事務局長の任免権は意思決定機関にあり、事務局長は意思決定機関の代表者から定期的に評価を受ける。私は15年間にわたって保険監督者国際機構(IAIS)の事務局長を務めていた際、6人の意思決定機関議長と共にIAISを運営してきた。