パンデミックを機にオンラインでの活動時間が増して、対面での活動に比べてできないことが増えたとよく言われる。しかし、オンラインでできないわけではなく、単に時間がかかるだけだ。一方、オンラインだからこそできることも確実に増えている。そのための技術も開発したいという。大塚さんへの取材は、1回目こそ渋谷のカフェのオープンテラスでリアルに会って行ったが、2回目はイギリス留学中の大塚さんと日本の筆者でZoomを介して行った。オンライン会議システムがなければ、2回目はなかったはずだ。
世界で使われるものを生み出すために
両親は幼い頃から海外を目指せと言い続けていたという。
「子どもには小さい時から、自分の好きな仕事で、社会のため、人のためになることをすれば、多少お金がなくてもどんな苦境に立たされていても死ぬときに満足して死ねるという話をよくしていたんです。そのためには海外を見ておかなければならないって」(母親)
3つ上のお兄さんもオーボエを学ぶために海外に留学したことがある。子どもの好きなことを応援して伸ばすという教育方針のようだ。
大塚さんはプログラミングの知識を深め、世界の人と繋がるためにも、英語をもっと学ばなければならないという思いがだんだん強くなっていったという。
プログラミングに関する最新の情報はほとんど英語で書かれています。プログラムを書いてエラーが出たとき、そもそもエラー文自体が英語で表示されるし、エラーに関する検索結果も圧倒的に英語で書かれたものが多いからです。プログラミング以外の分野でも、論文やネット情報など英語の情報の方が多い。世界で使われるものを生み出すには、語学を磨き、異文化を知ることは不可欠だと思いました」
中1の夏にはスタンフォード大学で開催されたITサマーキャンプに参加し、Apple、Google、Facebook(現在はMeta)など近隣のシリコンバレー企業をめぐり、12月には中国のシリコンバレーと呼ばれる深センを訪れ、テンセントなどIT企業を訪問。中2の夏にはイギリスに短期留学。そして2021年、中3の9月からはイギリスでの長期留学に入った。
テクノロジーで人の役に立つものを作るのが将来の夢だという。
「医療の分野でテクノロジーを使って問題を解決する、そんな仕事をしたいと考えています」
視力の衰えたひいおじいちゃんが大好きな新聞を読めるようなアプリを作りたい――。そこからスタートした大塚さんの挑戦がこれからも続く。