悪法・「優生保護法」はなぜ成立したのか
日本人は「ムード」に流されやすい。社会不安が高まっているところに、権威的な肩書きを持つインテリが溜飲を下げるような主張をすると、それに飛びついて世論が一気に傾くということが、これまでも度々起きている。
それがどんなに過激であっても、どんなに非人道的なものであっても、知識人から「日本の未来のためだ」と説明されると、「そうだ、そうだ」と国民も納得して、法律もサクサクと成立する。
そのわかりやすい例が、「世紀の悪法」として知られる「優生保護法」だ。
1948年に成立したこの法律はその名の通り「優生思想」を色濃く反映しており、「総則」にも「不良な子孫の出生防止」が掲げられていた。そのため、約1万6000人にも上る障害者が不妊手術を強制的に受けさせられた。
終戦から3年、「基本的人権の尊重」を掲げた新憲法が制定された日本で、なぜこんな非人道的な法律がすんなりと認められたのかというと、多くの国民が納得したからだ。
では、なぜ納得していたのかというと、権威的な肩書きを持つインテリたちが繰り返し繰り返し、「日本の未来のため」と主張をしてきたからだ。