JR常磐線各駅停車の亀有・金町駅を使う住民は昨年10月、東京メトロ千代田線の乗り入れにより「不当運賃」を取られているとして、JR東日本、東京メトロ、国に対して2万6980円の損害賠償を求めた。その第一回口頭弁論が1月13日、東京地裁で行われた。この問題の背景にある2つの思想対立とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
常磐線利用の住民16人が
JR東日本や東京メトロなどを提訴
JR常磐線で50年以上にわたりくすぶり続ける問題がある。それが綾瀬で接続する常磐線各駅停車と地下鉄千代田線の関係だ。千代田線の綾瀬方面行きは一部、綾瀬駅止まり、北綾瀬駅行きの列車が設定されているが、常磐線からの上り各駅停車は全列車が千代田線内に直通しており、事実上ひとつの路線として運行されている。
このうち綾瀬~北千住間は千代田線であり常磐線でもある二重区間とし、同区間をまたいでJRのみ利用するときはJR運賃、東京メトロ線のみ利用するときは東京メトロ運賃で計算することになっているが、常磐線と千代田線をまたがって利用した場合は北千住駅を境に両路線の運賃が別々に必要だ。
例えば金町駅や亀有駅から西日暮里駅乗り換えで山手線を利用する場合、紙の連絡乗車券は前後のJR線を通算して運賃を計算、ICカード利用の場合は常磐線、千代田線、山手線の運賃を合算し、そこから100円を割り引いている。ちなみに金町から池袋に行く場合、JR線のみ利用する場合は308円、西日暮里駅乗り換えは切符では390円、ICカードでは393円だ。
こうした状況の中、常磐各駅停車の亀有、金町駅を利用する住民16人は昨年10月19日、JR東日本と東京メトロ、国を相手取り、「他の利用者に比べて不当に高い運賃を負担させられている」として2万6980円の損害賠償を求めて提訴した。
弁護士ドットコムニュースによると、「亀有・金町の鉄道問題を考える会」代表世話人の松永貞一さんは1月13日に行われた第1回口頭弁論で次のように訴えたという。
「幼稚園の頃から70年近く常磐線を利用してきました。学生のころは上野まで乗り換えなしで18分で行けましたが、1971年の乗り入れで23~25分かかるようになりました。北千住での乗り換えは地下2階から地上2階まで行かなければなりません。直通のエスカレーターもエレベーターもありません」
一方、JR側は「2社を乗り継ぐから運賃が併算される。端的にそれに尽きる」と説明。JRだけよりも高くなるのは「ごく一般的な仕組みで、不当な運賃というのは法律的におよそあり得ない」と主張した。次回の口頭弁論は3月15日に開かれる。