この際に、私がおすすめするのは2つの未来像を考えることだ。 理想の未来と最も悪い未来だ。

 たとえば、理想的な将来を想像し、「○○が実現するには?」という問いを立てて、「そのためには何が必要? 何が必要?」と考えていくのである。 最も悪い未来についても同じように考えていけばいい。

 最近は、ICTやグローバル化の発達で、社会が複雑に絡み、状況の推移が速い。だから、ちょっと先の短期戦略や3~5年の中期戦略では変化に対応できなくなっている。そこで長期戦略の重要性が増しており、このためバックキャスティングが脚光を浴びている。

 だが、難しく考えることはない。この手法は想像的思考法を働かすということが肝なので、これまで蓄えてきた知識、常識に立脚しつつも、既成概念にとらわれず大いなる想像力を発揮し、未来の仮説を立てればいい。

 そして、その仮説を基に行動を起こす。そこで新たな示唆や洞察が得られれば、仮説を修正する、あるいは別の仮説に乗り換えて行動すればいいのだ。

・フォアキャスティング

 もうひとつのシナリオを考える方法がフォアキャスティングだ。こちらは、過去から未来を見通す手法だ。集めた情報を見ながら、過去から現在に至るまでの傾向を見つけ、未来を想像する。たとえば、過去から現在までに人口が伸びてきたという傾向があったとする。今後も人口増加は加速するだろう、というような単純な未来予想には有用である。

 3~5年先を見通すときに役立つと言われているが、状況変化の激しい現代では、フォアキャスティングの有効期限はもっと短いと思われる。

 国際情勢の分析などでは、バックキャスティングとフォアキャスティングを両方使い、分析が行なわれる。

 つまり、フォアキャスティングを未来に投射する一方、未来の出口をいくつか想像的に考えて、現代から未来に至るシナリオを論理的に作成するのである。

 私は、未来予測は「トンネルの工事」のようなものだと理解している。つまり、入口から掘る一方、出口からも掘って最終的にドッキングさせる。

 入口となる現状分析も重要であるが、未来を想像的に考えるバックキャスティングや仮説思考が重要となる。これらバックキャスティングとフォアキャスティングの思考法を併用することで、冷静な判断、行動が取りやすくなる。すなわち、何が起こっても対応できる力を身につけることができるのである。