総予測2023#46Photo:Diamond

「ダイヤモンドオンライン」をご覧の皆さま、新年あけましておめでとうございます。2022年以降、急激な円安、原料高、資源高の三重苦にさいなまれ、インフレ対応策に動く日本企業が増えました。23年は、日本銀行による政策転換で為替動向に注視が必要な上、引き続きインフレ懸念が高まりそうです。23年はどのような年になるのでしょう。ダイヤモンド編集部の業界担当記者に、日本企業の将来を決する「8大テーマ」について座談会形式で議論してもらいました。特集『総予測2023』の本稿では、座談会前編の4つのテーマについてお届けします。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子、村井令ニ、千本木啓文、名古屋和希、堀内 亮)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

>>記者座談会後編『23年の産業界「8大テーマ」!地銀襲うゼロゼロ融資リスク、高年収企業38社ランキング…』を読む

【テーマ(1)】
トヨタやNTTなどビッグカンパニーも参画
国策半導体ラピダスは無謀な挑戦

浅島亮子デスク

浅島亮子デスク(浅島D) 2022年は半導体の国策会社「Rapidus(ラピダス)」の発足が大きな話題となったね。日本の国策プロジェクトはことごとく失敗してきた印象があるけれど、ラピダス設立にはどのような事情があるの?

【キーワード解説】

Rapidus(ラピダス)/世界でまだ実用化されていない2ナノメートル以下のロジック半導体を開発し、27年ごろの量産を目指す国策会社。キオクシア、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、三菱UFJ銀行の8社による共同出資で設立し、政府は研究費700億円の支援を表明済み。

村井令二記者

村井令二記者(製造業界担当) 一口に言えば、半導体争奪戦の激化です。一般的に、半導体は回路線幅が狭いほど高性能になりますが、スマートフォンや画像処理に使われる最先端品の9割が台湾製。台湾半導体大手TSMCの独走が続いています。

 現行の最先端は3ナノメートル(ナノは10億分の1)ですが、次世代の2ナノ品を25年に量産する計画をいち早く発表済み。競合である米インテルとの格差は開く一方です。

 最先端半導体の調達に支障を来す恐れを強める米国は、20年にTSMC工場を誘致したのに続き(24年に4ナノ品を量産予定)、22年12月にも二つ目のTSMC工場の建設を決めました(26年に3ナノ品を量産予定)。

 一方の日本もTSMC工場を熊本県に誘致し、24年の稼働を目指しています。ただしここで生産できるのは10~20ナノメートル台の「ミドルクラス」と呼ばれる半導体製品。今後、最先端品の生産をどうするかについては、“ミッシングピース”のままとなっていました。国内に最先端品の生産能力を確保する必要性が高まる中、経済産業省が主導して設立されたのがラピダスなのです。

浅島D この国策プロジェクトには、日米台の思惑が密接に絡んでくるということだね。

次ページでは、日本にとってラピダス成功が“無謀な挑戦だといえる理由を日米台の思惑に絡めながら解説する。また、ビジネスマンが最低限知っておくべき「産業界の8大テーマ【座談会前編】」のうち防衛費が43兆円に激増した背景と死角など、3つのテーマについても解き明かす。